国内放送事情

シリーズ“融合”時代 放送メディアの課題と可能性⑤

「日本人とメディア」調査から読み解くデジタルメディア地図2009

本稿は、2009年6月号から、地上デジタル放送の抱える問題を中心に紹介してきたシリーズ「“融合”時代 放送メディアの課題と可能性」の5回目で、地上デジタル放送以外のデジタルメディア、すなわちBSデジタル放送と専門チャンネル、デジタルテレビやデジタル録画機とデジタル放送の機能、パソコン、携帯電話などについて、その現状と課題を、NHK放送文化研究所が2009年1月に実施した日本人とメディアに関する世論調査、3月に関係業界などを対象に行ったアンケート調査の結果から、それぞれのメディアごとに過去の調査と比較しつつ概観し、さらにそれぞれのメディアの関係性について考察していく。

  1. 各メディアの普及・利用状況

    BSデジタル放送については、普及は順調に伸び、デジタルでのみ放送するチャンネルをよく見る人が増えていることなどからここ一年で急速にデジタル化が進んだ様子が見て取れる。

    専門チャンネルとデータ放送の利用状況については大きな変化はなかった。

    地上デジタル放送が受信できるテレビの台数は、ない層が減少し、1世帯平均の地デジ所有数は、0.6台になっている。デジタル録画機については、既購入層が伸びている。

    パソコンの利用状況は、週に1日以上利用している層で増加傾向が見られる。パソコンの動画の利用者は半数近くになるが、有料でのサービス利用はまだ低い。非利用者については、40歳代以下、有職者、大学卒、年収500万円以上の層で、今後の利用意向が平均より高かった。

    携帯電話の利用法については、「利用していない」が減って、「インターネット」、「ゲーム」、「音楽再生」、「テレビ受信」が伸びている。利用する機能数も増加しているが、これは年層が低いほど、また、年収が高いほど利用している機能数が多くなっている。

  2. それぞれのメディア相互の関係について

    地上デジタル放送、BSデジタル放送、専門チャンネル、パソコンによるインターネット、携帯電話によるインターネットの5種のメディアを導入・利用と意向から4層に分類しクラスター分析を行い7つのタイプに分類したが、今回は、これまで見出せていた「非導入・導入意向あり」層に該当するタイプをまとめることができなかった。テレビ系のみ、インターネット系のみの利用者層があり、「非導入・意向なし」層と利用する層の差が広まったものと推測される。

メディア研究部(メディア動向)石橋 丈