国内放送事情

シリーズ“融合”時代 放送メディアの課題と可能性④

これからのテレビに期待されること

~地域社会貢献への道~

東京への一極集中が進むのに加え、長引く不況などにより地域の疲弊が顕著になる中、海外を含めた「地域外」への情報発信などを通じた地域活性化に対する、テレビの貢献に期待が高まっている。視聴者や地方自治体が寄せる期待に、地域のテレビ局はどうこたえていくべきかを考察する。

不況による広告収入の減少や、2011年の地上波放送の完全デジタル化に向け、共聴施設の改修など視聴者側の準備が思うように進まないなど、テレビ業界を取り巻く状況はこれまでになく厳しいものがある。ただ、その一方でNHK放送文化研究所が今年3月に実施した視聴者アンケートでは、▽テレビは視聴者にとって日常生活の様々な場面で依然として重要なメディアとしての位置づけを保っていること、▽地域情報の充実や、地域活性化、大規模災害の際の緊急報道といった分野で、視聴者がテレビに高い期待を寄せていることが示された。また、同じ時期に実施した地方自治体に対するアンケート調査では、視聴者と同様の期待に加えて、地元のテレビ局が地域の情報を全国や海外へ発信することを強く求めていることが分かった。

一方テレビ局側の認識だが、全国の民放に対するアンケート調査の結果によると、視聴者や自治体のこうした期待に対し、地域情報の充実や、情報の全国・海外への発信についての意識が比較的弱く、「送り手」と「受け手」との間に若干の認識の開きがあることが浮き彫りとなった。これを解消して地域社会への貢献を果たしていくため、テレビ業界はこれから何をすべきかを、各種調査結果の紹介と分析を通して考察した。

メディア研究部(メディア動向)吉次 由美