国内放送事情

「情報通信法」論議で焦点となるコンテンツ規律

~表現の自由、言論の多様性をどう担保するか~

通信・放送融合に見合った法制度に転換しようと、総務省の情報通信審議会で「情報通信法」の検討が進んでいる。しかし、法体系を伝送インフラやコンテンツといったレイヤー別に規律する「横割り型」に改める見直し案には、地上テレビ放送事業者を中心に強い反発が出ている。なかでも論議の焦点になっているのは、表現の自由や言論の多様性・多元性の維持に直結するコンテンツ規律の部分であり、この問題について、これまでにどのような議論が行われてきたのか論点ごとに整理するとともに、今後の課題について考察を行った。

コンテンツ規律をめぐる具体的な論点としては、これまで放送・通信といった伝送路ごとに規律が異なってきたコンテンツをどのように再編成し、どの範囲まで規制を行うのか(規律範囲の線引き問題)、番組準則といった規律の内容は従来どおりでよいのか(規律内容の問題)、規制を行う主体は、総務省のままでよいのか、FCCのような独立行政委員会にするべきか(規律機関の問題)といった点が挙げられる。さらに、放送ではこれまでマスメディア集中排除や地域免許制度といった構造規制が設けられてきたが、これらについても、制度改革の方向性によっては言論の多様性・多元性に影響を与えるといった指摘がなされている。本稿では、これまでの通信・放送融合をめぐるこれまでの議論の流れを振り返りつつ、コンテンツ規律に関して情報通信審議会の場でどのような議論が行われているのか、論点ごとに整理を行った。その上で、法改正によって影響を受ける放送事業者がコンテンツ規律に関してどのような懸念を抱いているのか、また、法案の作成に向けてどのような点が考察すべき問題として残されているのか指摘し、2010年に予定されている法案の国会提出に向けた議論の方向性を探った。

メディア研究部(メディア動向)村上 聖一