国内放送事情

テレビ政治時代のメディア接触と政治観・マスメディア観

~日本の現状と調査研究の可能性~

近年、日本でもワイドショー番組やインフォテインメント番組などで政治の話題が多くとりあげられるようになっている。テレビ政治の時代に入った。その功罪はさまざまに議論されている。「政治を面白く伝えることは、視聴者の政治に対する信頼感を損ない、シニシズムを助長する」という批判がある一方で、「政治知識を高め、参加を促す」という賛成論がある。こうした議論に資するための、基礎的なデータを収集し、日本での「テレビと政治」に関する実証的な、社会調査的な研究が可能であるか検討したい。

  1. 日本における先行研究の動向

    1980年代以降の先行研究の知見を確認した。アメリカにおける「テレビ政治」状況、つまり政治報道の大衆化、娯楽化によりプラス、マイナスの影響が確認された。内容だけでなく、テーマの伝え方、多メディア状況下での視聴者の娯楽志向も無視できない影響があるとされた。

  2. 調査研究のおもな結果

    今回は、「メディア接触」「認知と態度」「情報コミュニケーションネットワーク」「メディアリテラシー」の4つの要素の関係を調査した。その結果、以下のことが分かった。(1)政治関連番組を見る理由から視聴者の娯楽志向が高まっていた。(2)報道番組・ニュースの伝え方では、解説をするもの、面白く伝えるものを求める視聴者も多かった。(3)テレビ・新聞報道に対する評価については、「報道が世論操作をしようとしている」と思っている人は45%、「テレビニュースは視聴率がとれるように作られている」と思っている人は44%であった。

  3. 研究調査の可能性

    今後の研究に資することができるように、いくつかの尺度の可能性を検討した。「報道への批判的態度」「社会・政治全般に対する信頼=懐疑尺度」など、いくつかの尺度の可能性が高いことが分かった。

    また、テレビと政治の関連を考える上で、視聴者のメディアリテラシーが重要なポイントとして考えられるが、「テレビリテラシー」の概念を構成して可能性を調べた。“テレビリテラシーの高い人たち”を「テレビについてその功罪・特徴などをよく理解しており、過度に信頼・没入するでもなく、過度な批判・攻撃をするでもなく、適度にテレビの特徴を理解し、テレビを有効に適切に利用・活用する人たち」と定義した。分析の結果、このテレビリテラシーを計測する尺度が可能であり、報道・情報番組への接触を説明する要因であることが確認できた。

東洋英和女学院大学 飽戸 弘/ライツ・アーカイブスセンター 服部 弘