国内放送事情

アナログ停波への課題

~2008年1月「日本人とメディア」世論調査から①~

地上デジタル放送(以下 地デジに略)が始まって4年。2011年7月24日までの地上アナログ放送の終了が、3年後に迫ってきた。

地デジ放送の視聴可能世帯は、今年3月末時点で、全世帯の93%まで到達し、送信側の準備態勢は順調に進んでいる。一方、受信側の受信機の普及率は、昨年3月時点で27.8%にとどまっており、国内1億台の普及までの道のりはまだ長い。

当稿では、NHK放送文化研究所で今年1月に実施した第3回「日本人とメディア」世論調査(2006年から実施)をもとに、アナログ停波に向けた視聴者の動向を分析し、政府や関係業界が取り組むべき今後の課題を探った。

今回の調査結果では、地デジの視聴を始めた人が順調に増えた一方で、視聴意欲が低い人たちの割合が前年からほぼ変化していないことが判明したほか、地デジをまだ視聴していない人に、視聴開始時期を聞いたところ、「アナログ放送が終了する時点」と答えた人が43%にも上り、アナログ停波直前に、受信機の購入や受信環境の整備が集中する可能性が高いことがわかった。

また、地デジを視聴していない人や、地デジを視聴していても、アナログ・サブテレビを所有している人に、デジタル化のために、テレビ1台につきいくらまで負担してもよいかたずねたところ、「2万円未満」という答えが50%を超えた。市場では、現在3万円未満のデジタルテレビは販売されておらず、このままであれば、低廉なデジタルチューナーの一定の需要が見込まれると予測できる。

さらに、アンテナなど受信環境の整備や録画機などの周辺機器のデジタル化に、新たな負担が伴うことが、高齢者には十分に周知されていないこともわかった。

こうした結果を踏まえ、当稿では、総務省情報通信政策局の吉田博史地上放送課長に今後の政府の取り組みについてインタビューも行った。

2011年7月までに円滑に地上アナログ放送を停波できるのか。残り3年の政府・関係者の取り組みにかかっている。

メディア研究部(メディア動向)藤野優子