国内放送事情

地域密着チャンネルの公共性とは

~ケーブルテレビ51年目の課題~

日本のケーブルテレビは、1955年に群馬県伊香保町に誕生してから半世紀以上が過ぎたが、最近、自主放送のコミュニティチャンネルをめぐって、公共性を問われる問題が相次いでいる。都内のケーブルテレビでは、市民が制作しコミニュティチャンネルで放送された番組が政治的公平性に問題があるとして、総務省から行政指導を受けた。また日本ケーブルテレビ連盟の放送番組基準には、放送の光点滅や健康被害に関する規定がなく、総務省の指導を受けて、基準の見直し作業が進められている。こうした問題が起きた背景には、放送と通信の融合といわれる動きのなかで、通信事業者や衛星放送事業者が光ファイバーを使ったケーブルテレビ事業に参入し、激しい競争が始まったことがあげられる。従来型のケーブルテレビは、競争に打ち勝つために自らの強みであるコミュニティチャンネルの充実に乗り出し、政治や経済の分野にも積極的に乗り出し、その当然の帰結として放送の公共性の問題に直面したのである。ケーブルテレビは有線テレビ放送法に基づいているが、放送の中身については放送法が準用され厳しく規制されている。放送と通信をめぐる法体系の検討が進められている中で、ケーブルテレビのコミュニティチャンネルにいかなる公共性を求め、どれだけの規律を課していくか、そしてケーブルテレビが自らの可能性をどう広げていくかは、今後の大きな課題となっている。

主任研究員 塩田幸司