国内放送事情

多様化する教師のメディア利用とメディア観

~「小学校教師調査」から~

2006年は"学校教育とメディア"にとって節目の年です。2001年から国が進めてきたe-Japan戦略の「教育の情報化」では,2006年 3月までに,全国の公立学校のすべての教室にパソコンを配備し,ブロードバンドで結んで,あらゆる授業で活用できる環境を整えることを目標としてきました。NHKでも,こうした環境の変容に呼応して,放送による教育番組の提供に加えて,インターネットで関連教材や動画を提供して,双方向学習が可能になる「NHKデジタル教材」の開発を進めてきました。

国が設定した目標については,パソコンルーム以外の一般教室のネットワーク化が大幅に遅れ,教員が日常的に授業でパソコンを利用できる状況に達していません。e-Japan戦略に続くIT新改革戦略(2006年1月発表)のもとで,次の5年間,ハード面での環境整備を進めるとともに,すべての教員がパソコン・インターネットを活用して効果的な授業ができるようになることをめざして,具体的な目標設定等の施策の検討が進められているところです。

放送文化研究所では,NHKの学校放送番組の企画・編成や関連する教育サービスの充実に役立てる目的で,1950年以来「学校放送利用状況調査」を定期的に実施しており,その中でも,学校のメディア環境の変化を把握するために,パソコンやインターネットの普及や利用の状況について調べてきました。しかし,現在のようなメディアの変革期には,学校単位の調査だけではなく,教師ひとりひとりのメディア利用の詳細やメディアに対する意識を把握する必要が大きいことから,2005年度は,小学校教師個人を対象とする全国調査を実施しました。

この調査から,担当学年(2年生,4年生,6年生),教師の年齢(教職経験年数)や性差,パソコン利用歴,メディア観の違いによって,授業におけるテレビやビデオ,パソコン・インターネットの利用に違いがみられるなど,教師のメディア利用の多様性が浮き彫りになっただけでなく,"メディアについての学習"に対する関心の高まりも,明らかになりました。

本稿では,今後の学校教育向けサービスにおいて,メディア,とりわけ放送機関にはどのような役割が求められているのかを考えていく視点から,この小学校教師調査の結果を紹介します。

  1. 教師を取り巻くメディア環境
  2. 授業における教師のメディア利用
  3. NHK学校放送番組とデジタル教材の利用
  4. メディアに対する教師の意識と期待
  5. メディア・リテラシー育成の取り組み

主任研究員 小平さち子