国内放送事情

IPTV利用者に対する調査

インターネット回線にセットトップボックスをつないで、テレビで手軽に多チャンネルやビデオオンデマンドを利用することのできるIPTVが普及し始めている。日本では4つの事業者がサービスを行っており、その利用者は10万人を超え、20万人に近づいているとみられている。

放送文化研究所では2005年の年末から年初にかけて、1000人規模で、日本で行われているIPTVサービスの利用者を対象に、どのようなサービスを利用しているのか利用実態調査を行った。ビデオオンデマンドではコンテンツに対するニーズは集中しておらず、きわめて分散的である。今回の調査であげられたタイトル総数418の中で、利用者1人のみのタイトルが370タイトルとなっている。分布は一部の人気ビデオを例外として、多種類のビデオタイトルにまんべんなく分散しており、いわば大量のニッチ商品が売り上げの大多数を占めていることになる。専門チャンネルで人気のあるのは「ディズニーチャンネル」で、ジャンル別ではアニメ、音楽、ドラマなどの人気が高い。アニメは子供に付き合って母親も見るという、随伴視聴が大半を占めると思われる。加入時に魅力を感じたサービスは、ビデオオンデマンドより多チャンネルと答える人がやや多いが、はっきりと優劣をつけるほどではない。「何か面白い番組がありそう」「レンタルビデオの代わりに」と思って、ここ半年以内に加入した人たちが6割を占める。今までの放送、映画、レンタルビデオショップに飽き足らない層のニーズを把握するとともに、インターネットというハードルを低くしてメディアリテラシーの高くない人たちも気軽に利用できるような環境をどう作り広めていくかが、IPTV普及の鍵となるのではないか。

研究主幹 三浦 基/主任研究員 小林憲一