国内放送事情

フェアユース(公正使用)をめぐる20年

家庭録画の「大憲章」ソニー判決の成立と黄昏

デジタル時代の放送産業にとって、コンテンツの権利保護は重大な課題である。ことに違法なP2Pファイル共有の普及は、コンテンツ産業にとって大きな脅威となっている。こうした問題について、1984年のアメリカにおけるビデオ録画をめぐるソニー判決が、技術産業の「大憲章」(マグナカルタ)として、つねに重みをもって語られてきた。ここには二つの意味があり、ひとつは家庭における録画がタイムシフトとして認められたことであり、第2に、技術革新を促進する立場を最高裁判所がとったことである。しかし、2001年のナップスター判決で、個人のフェアユースの範囲が限定的に判断され、さらに、本年6 月のグロックスター判決では、最高裁はソニー判決のルールを適用せず、違法行為を誘発する意図があれば、開発・配布者に責任があるとする画期的な判決を下した。これはソニー判決以来21年目の、重大な転機であった。

本稿では、その後、公開された1984年判決当時の、最高裁判所の裁判官のメモなどから、ソニー判決に内在した複数の論理的基礎の存在や、その間を埋めるべき事実審理がなされていないなどの問題点を指摘した、アメリカにおける最新の研究成果を踏まえ、さらにナップスター判決とグロックスター判決の詳細な検証を行い、この21年間における質的な変化からP2Pファイル共有をめぐる司法の判断の真相に迫る。

研究主幹 三浦 基/主任研究員 小林憲一