国内放送事情

IT企業の球界進出

2005年,プロ野球界にIT(情報技術)関連企業2社が球団オーナーとして加わった。インターネットモール(仮想商店街)の運営などを手がける「楽天」と,ポータルサイトのヤフーや固定電話の日本テレコムなどグループ企業およそ300社を抱える,業界最大手の「ソフトバンク」である。

球界が新規参入企業を迎え入れるきっかけは,近鉄バファローズが年間40億円もの赤字に耐えかねて,オリックス・ブルーウェーブと合併したことだった。同じパ・リーグに属する他球団も十億~数十億円の赤字とされ,「パ・リーグは破産状態」と公言してはばからないオーナー企業さえある。

それでも,IT2社は球界参入を選択した。2社だけではない。真っ先に新規参入に名乗りをあげたライブドアや,一時ダイエーホークスや横浜ベイスターズの買収意志を表明した有線ブロードネットワークスなど,プロ野球に関心を示すIT企業はほかにもある。彼らは,「破産状態」とされる球界でも,ITを活用することで必ず黒字化できると見込んでいる。

IT関連ビジネスは,動画や音楽の配信,双方向のコミュニケーションなど,メディア産業的性格を持っていて,その戦略は必然的に,放送を含めたメディア界の現状とリンクしている。ゆえに,彼らの球界参入の意図を読み解くことで,メディアの今も見えてくる。

プロ野球に新規参入したIT企業2社の戦略とメディア状況との関わりを見ていくとともに,その戦略の中心となるインターネット中継の可能性や課題について考える。

メディア経営 研究員 田中 学