番組研究

テレビ60年の考古学

~1970年代 ドキュメンタリーに何が起きていたか~

今年テレビは放送開始から60年をむかえる。とりわけ1970年代前半に、テレビドキュメンタリーは技術的にも表現的にも飛躍的な変化をとげた。変化の第一は、ラジオや映画を母体とするドキュメンタリーが、テレビのドキュメンタリーとしてスタイルを獲得したこと、第二は、ニュース、ドラマ、バラエティなどとの混淆、ジャンルの越境が起こったことである。前者は「自立」であり、後者は「共生」であった。

こうした見方は、テレビ60年の通史から割りだしたものではなく、あくまでも筆者がテレビドキュメンタリーの制作者として経験的にえた視点と、アーカイブの後視的な検索による知見を総合して導いたものである。この時期の特徴を「テレビがテレビに対して再帰的なまなざしを向けたこと」と言うことができよう。

本稿は、1970年代をテレビドキュメンタリーの変遷における注目すべき「地層」とし、そこを「発掘現場」とするテレビの「考古学」の試みである。

メディア研究部 桜井 均