番組研究

論文紹介:NHKアーカイブス学術利用トライアル研究から

設樂馨著
「NHKバラエティ番組に見る文字テロップの変遷
~テレビにおける表記実態と機能の分化~

NHKアーカイブス学術利用トライアル研究の成果として書かれた論文を紹介するコラムの4回目。今回紹介するのは、近年、多くの番組に付されるようになった「文字テロップ」について、いつごろから、どのような形で番組に付されるようになったのか、またその内容や機能はどう変遷してきたのかを、検証した研究である。筆者は、「バラエティー番組全般における文字情報の変遷とその要因」を分析するため、1960年代から5年ごとにその年代の代表的なバラエティー番組を選び、その中で、どのような文字情報が、どのような形と内容で、どのくらい付されていたかを定量的、定性的に分析した。その結果、量的には、60年代以降確実に増加していること、増加のポイントは、1980年代と2000年代にそれぞれあったことを明らかにした。また、機能面では、単純な構成明示機能から、表記内容の詳細化、番組の個性に応じた表記内容の多様化などを経て、演出効果や視聴者を惹きつける「フック」効果まで担うようになってきたことがわかった。こうした変化の要因として、筆者は、「文字発生装置」の導入・進化と、視聴者側の変化(ながら視聴の増加)を挙げている。評者(原)は、「文字テロップ」増加の要因には、演出効果を担う役割・機能の増大があるとの仮説を持っており、民放番組も含めた分析の必要性を指摘した。

メディア研究部 原 由美子