番組研究

「日本賞」コンクールにみる
世界の教育番組・コンテンツの潮流

1965年にNHKが創設した教育番組の国際コンクール「日本賞」は、各時代の世界の教育放送の特徴を映し出してきた。2000年代に入ると、インターネットの急速な普及等メディアの変化に対応して、コンクールの対象は放送番組以外にも拡大され、新たな時代を迎えた。本稿では、この10年間にコンクールで視聴してきた様々な作品の具体例を通して、最近の世界の教育番組・コンテンツ動向の特徴を紹介する。

  1. 斬新な切り口で社会の現実に向き合う教育番組・コンテンツ:警察官と麻薬常習者の間に生まれた信頼関係で実現した薬物問題を取り上げるドキュメンタリー番組や、当事者たちの出演が大きな教育効果をもたらすダウン症の世界を描いた番組、障害者たちが自らのライフスタイルを変化させる目的で充実させてきたウェブサイト等
  2. 歴史から今を考える番組・コンテンツ:テレビ番組とオンラインゲームを組み合わせた第二次世界大戦に関する小学生向け学習教材や、市民から収集した20世紀の日常生活の映像を再構成して制作したオンライン教材等
  3. 子どもの心の内面を考える多様な番組:良好な友だち関係の構築に向けたディスカッションを促すドラマ仕立ての教育番組、自己の存在意義を考えるための“philosophy”がキーワードの子ども向け教育番組や、児童虐待を考えるための大人向けの教育番組等
  4. 科学への関心を高める教育番組・コンテンツ:科学的思考力の育成に向けた工夫
  5. 学校の課題に対応する番組・コンテンツ:クラス経営を考えるための教育番組や、生徒の問題行動への対応を学ぶための教師向け双方向アプリケーションソフト等
  6. 10代に向けた多様な展開:クロスメディアを活用した子ども参加型の番組や、社会への参加を目的とする、子どものテレビ番組制作への関与の拡大
  7. 多様化する幼児向け番組の内容と双方向性:幼児自身が社会の現実に向き合うことを重視する番組の増加と、幼児向け番組に連動したウェブサイトの発展
  8. 新しいメディア環境下の教育番組・コンテンツの展開:個別の教育番組に連動したウェブサイトの他、学校向けや教師向け等の教育ポータルサイトの発展、メディアに関する教育・学習のための番組やウェブサイトの増加
  • ◆社会状況とメディア環境の変化が続く中、教育番組や様々な形態の双方向コンテンツが取り上げるテーマはさらに増え、学習形態も多様化していくものと考えられる。

メディア研究部(番組研究)  小平 さち子