家庭内多メディア共存時代のいまテレビ番組・ゲームと家族コミュニケーション
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「2010年春の研究発表」から、大画面のデジタルテレビを媒介とするテレビ番組・テレビゲームと、家族コミュニケーションとの関係について議論したシンポジウムの報告を行う。乳幼児期から小学生までの子どもと家族との関係について各パネリストの発言や論点をまとめ、家族におけるメディアのあり方を考える一助とする。
シンポジウムでは、テレビ番組の視聴やテレビゲームの利用のしかたといった、利用形態からのアプローチに議論の焦点を絞った。子どもとメディアの関係を継続的にとらえている“子どもに良い放送”プロジェクトや、小学生の子どもがいる家族を対象としたメディア利用調査の結果をふまえ、研究者や、テレビ番組・テレビゲームのそれぞれの制作者、保護者など異なる立場のパネリストとともに討議を行った。
テレビ番組やテレビゲームは、それらを親が子どもに与えっ放しにするのではなく、ともに視聴したり遊んだりしながら、親子が会話を交わすことが重要である。それらは家族がコミュニケーションを行うために必要なトピックやきっかけも与えてくれる。テレビ番組やテレビゲームの制作者もその点を意識していて、家族の会話の引き金になったり、家族の共通体験作りに役立つ番組やゲームを目指している。
今後、家庭においても多メディア化が進み、新しいメディア・サービスによって家族コミュニケーションを活性化させることが期待される半面、それらとどのようにつきあっていけばいいのか、家庭のメディア利用における親のイニシアチブが求められる。また、中学生・高校生になると、携帯電話のようなパーソナルメディアの利用も増えるが、むしろそれらを取り込みつつ、家庭における利用の仕方をともに考えることも、家族コミュニケーションのきっかけとなる。
幼い頃に培われた家族の結びつきは、その後子どもが成長してからも、家族の関係を支える基礎となっていく。メディアには、家族を支える多様なサービスの提供が望まれる。
汐見稔幸(白梅学園大学学長) 菅原ますみ(お茶の水女子大学大学院教授) 高野 優(育児漫画家) 竹田玄洋(任天堂株式会社 取締役 総合開発本部長) 米村裕子(NHK青少年・教育番組部チーフプロデューサー)