番組研究

ワークショップ

学校と家庭 学習とメディア利用の可能性

~小学校英語の事例から考える~

2009年「春の研究発表」から、まもなく必修化される小学校英語を題材に、メディアが子どもの学習に対して提供できるサポートの可能性を考えるために開催したワークショップについて報告する。 本稿では、ワークショップにおける議論を整理し、子どもの学習の場である「学校」と「家庭」において、求められるメディア・サービスのあり方を考える一助とする。

小学校英語の5・6年生における必修化は、2011年度から全面実施となる。すでに全国のほとんどの小学校で、何らかの形で英語を取り入れた授業や活動が行われている。

ワークショップでは、このような小学校英語の現況をふまえ、「学校」向け教材としてNHKが提供する番組とウェブ教材を、「家庭」向け教材としてベネッセコーポレーションが提供するパソコン教材と携帯ゲーム教材を取り上げた。さらに、海外の公共放送が提供する教育サービスの事例も交えながら、小学校教員や保護者など、子どもの学習に関わるさまざまな立場の参加者がグループに分かれて、メディア利用の有効性についてディスカッションを行った。

ディスカッションから見えてきたのは、NHK・ベネッセの教材は、学校の学習では、子どもの学びを促すために教師のアシスタントとして利用できる可能性がある一方で、家庭の学習では、子どもの学習意欲や自主性を引き出す良さはあるが、それを持続させるためには工夫が必要であるということだった。また、小学校英語のように地域や学校の環境に応じて多様なアプローチが進められている教育課題については、学校のみ、あるいは家庭のみという子どもの学習の場を閉じた取り組みでは限界があり、学校と家庭の学習を連続あるいは連携させる必要性について、異なる立場の参加者が共有しあうことができた。

今回のワークショップは、あくまでも議論の入り口である。小学校英語の必修化がひとつのきっかけになって、学校あるいは家庭における、メディアを利用した新たな学習が展開されることが期待される。

メディア研究部(番組研究)渡辺 誓司