番組研究

進む学校放送利用の多様化と進まない学校のデジタル化

~2008年度NHK学校放送利用状況調査から~

「学校放送利用状況調査」は、NHK放送文化研究所が1950年から定期的に実施してきた全国調査で、学校教育現場のメディア環境や利用実態などを調べている。

本稿では、2008年度に実施した調査から、小学校・中学校・高等学校について取り上げる。また、2008年に告示された新しい学習指導要領に基づくこれからの学校教育とメディア利用について考える。

NHKでは、2001年度から、学校放送番組と連動した「NHKデジタル教材」をインターネット 上で提供している。今回の調査では、授業でNHKデジタル教材を利用している小学校の割合 が大きく増加した。教材の普及活動が利用へと実を結び始めたといえる。また、NHKデジタル教材の利用の増加に伴って、学校放送番組は、放送とNHKデジタル教材を連動させて利用したり、それぞれを単独で利用したりなど、利用形態が多様化していることがうかがえる。

一方、学校のパソコン環境は、全体として2年前の前回調査とほぼ同じ水準にとどまっている。当初の国の計画であった、2005年度内に「各普通教室で高速インターネットにアクセスできる環境の整備」の実現には、いまだ程遠い状況である。また、地上デジタル放送を視聴できるテレビの保有校の割合は、小・中・高等学校のいずれも10%台である。デジタル放送への完全移行が予定されている2011年を控えて、その対応も大きな課題といえるだろう。

新しい学習指導要領では、これまでの「ゆとり」路線から転換し、理科や算数を始め学習内容や授業時間数が増加する。NHKデジタル教材は、理科教材としての利用が多く、またそれに対する期待も高い。今回の調査でNHKデジタル教材の利用が増加したことは、メディアを利用した学習の新たな展開の可能性を示すものであり、教材利用の効果研究なども進むものと思われる。デジタル化と学習内容の増加という変化が学校を取り巻く中で、今後の実践の広がりが注目される。

メディア研究部(番組研究)渡辺 誓司