番組研究

<インタビュー企画> 地域発・人気番組はこうして育てる

第5回 「ラジオの手法で “おもろいことやる”気分に密着すると関西的なんですわ」

~毎日放送・制作局長 三村景一氏~

1999年に始まった大阪の毎日放送(MBS)の人気番組『ちちんぷいぷい』は、ラジオのDJ時代から大阪で最も人気の高い局アナ、角淳一氏がパーソナリティをつとめる14時から18時まで約4時間の生ワイド番組。番組は地域番組激戦区大阪でライバル局を凌いで平均視聴率8%を上げているが、他局の刺激たっぷりの情報番組と異なり、病み上がりでテンポがスローで優しいキャラクターの角氏が週替わりのゲストとスタジオで繰り広げるのんびりムードの「よもやま話」が持ち味。その人気の秘訣を、番組を立ち上げたプロデューサーの三村景一氏は、自分も長年携わってきた「ラジオ番組のようにテレビ番組を作ろうとした」ところにあるという。

パーソナリティが番組の顔であり柱であるラジオでは、その日の気分で用意したレコードの楽曲が容易に変更されるなど内容はパーソナリティのアドリブに委ねられる。リアルタイムで視聴者と結びつくその瞬間の面白さと意識の流れを大事にするのだが、『ちちんぷいぷい』でも例えば、夕日の中継が感動的ならば予定したコーナーを飛ばしてでも延長する。また他局で多く見られる、おいしい店紹介などの生活情報の提供にはこだわらず、子どもが学校から帰る時間帯に家庭にカメラを持ち込む「ただいま!」や夜、ほろ酔い加減のお父さんに路上でデジタルビデオカメラでインタビューする「昨夜のオヤジ」など、生活の空気や家族の情感を掬い取るミニ企画が多い。

「大阪では生活感そのものが地域文化の核」という三村氏に、広く関西一円の視聴者の「共感」に支えられ、全国の地方局も注目するローカル番組として10年近く異彩を放ってきた『ちちんぷいぷい』制作の壷と心を聞いた。

メディア研究部(メディア動向) 七沢 潔