番組研究

デジタル時代の教育とメディア①

学校教育現場のデジタル化とメディア利用の展開

~2006年度NHK学校放送利用状況調査から~

「学校放送利用状況調査」は、NHK放送文化研究所が1950年から定期的に実施してきた全国調査で、学校教育現場のメディア環境や利用実態などを調べている。

2006年度に行った調査では、2005年度内の実現を目標に進められたe-Japan戦略「教育の情報化」によるメディア環境整備の進捗状況をふまえ、教育におけるメディア利用の総体を把握することに努めた。本稿では、小学校・中学校・高等学校について取り上げ、デジタル時代の学校教育におけるメディア利用やその展開の可能性を考える。

  1. 進まない学校のパソコン環境整備
    学校のデジタル環境整備は、2000年度以降、インターネット接続やパソコンの台数、ブ ロードバンド化や校内LANの整備などで進展がみられた。しかし、今回調査では前回調査の2004年度時点から進んではいるものの、全体としてそのスピードは鈍化している。
  2. 学校放送番組利用の多様化
    NHKでは、2001年度から、学校放送番組と連動した「NHKデジタル教材」をインタ ーネット上で提供している。今回の調査では、小学校においてNHKデジタル教材のみを単独で利用している学校が存在するなど、放送とウェブ教材が多様な形で利用されていることがわかった。また、中学校や高等学校では、教科以外の特別活動番組への期待が寄せられている。
  3. 教師向けサービスの利用の高まり
    教師向け番組『わくわく授業~わたしの教え方~』が、すべての校種で教師によく見ら れている。また、2006年度に開設した、教師のためのインターネット・サービス「NHKティーチャーズネット」への関心も高い。授業の進め方や効果的な教え方などの情報提供に対する教師のニーズがうかがえる。
  4. NHK教育サービスの利用と学校放送番組への期待
    放送やNHKデジタル教材、NHK主催の教育イベント、NHK番組の市販ビデオやD VDなど、NHKが学校向けに提供しているサービスを利用している学校は、小学校の87.1%、中学校の76.5%、高等学校の72.7%を占める。多様なNHK教育サービスにおいて学校の利用が圧倒的に多いのは、放送番組・デジタル教材の利用であり、映像を通してこそ可能な学習経験に対する期待が大きいことがわかる。

専任研究員 渡辺誓司/主任研究員 小平さち子