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ことばウラ・オモテ

ことばの遊び

ことばのクイズや、難しい漢字を読むクイズがはやっています。テレビでこのようなクイズ番組を見ると、「へえ、そんな漢字があったのだ!」と驚くこともありますが、そのような漢字はほとんど一生のうちに1回も使わないのではないかと考えてしまうこともあります。

ことばのクイズで比較的多く目にするのは、かなで書いた文字を並べ替えて意味がある単語や人名にするというものです。これはアナグラムといって、外国にもあるものです。本来のアナグラムは、ある文字列の順番を入れ替えて、別の意味を持つ単語にするというものです。人名でこれを行い、ペンネームにしたのが「泡坂妻夫」さん。本名の「厚川昌男」を入れ替えたものです。クイズのように意味のない文字列にするのは少し曲がないと言われそうです。

ことばをあれこれいじっていると、遊びが生まれます。昔から、暇と知恵がある人が考えたのでしょう。ことば遊びは、ことばを覚えるこどもたちに必要なのかもしれません。NHKのEテレでも積極的に取り入れています。しかし、テレビを相手にするよりも、対戦相手がいたほうがこどもたちも張り合いがあるようです。

荻原浩さんの「愛しの座敷わらし」という小説には中学生と小学生のきょうだいが、「山手線ゲーム」というものをしています。「お題に合わせて違う言葉をどれだけ言えるかを競争する遊び」と説明されています。「中華料理」というお題に、「チンジャオロース、マーボナス、チャーシューメン」などと次々に言って、同じものが出たり、時間が過ぎても答えられないと脱落するというゲームです。小説では「サッポロラーメン」は中華料理かどうかで判定がもめるのですが、ことばを覚えはじめの小学生などには、トレーニングとして良いかもしれません。「季節の野菜四川風炒め」は料理名かどうかなど判定が難しくなるのは覚悟しなければいけないかもしれません。

オーソドックスなことば遊びで、結構難しいのが「積み上げ文章」です。大学生ぐらいでも、続けていくのは難しいかもしれません。手順はこうです。たとえば7人で行う場合、最後の順番になる人を攻撃しようと全員が知恵を絞ります。はじめの人が「白鳥のひな」という語を作ります。次の人はこの語を元に「○○が○○で○○したとき、○○は○○して○○した。」という形に近づくように文を積み上げていきます。「白鳥のひな」「白鳥のひなが、親白鳥について」「白鳥のひなが、親白鳥について泳いでいるとき」「白鳥のひなが、親白鳥について泳いでいるとき、カラスは」「白鳥のひなが、親白鳥について泳いでいるとき、カラスは巣を探して」「白鳥のひなが、親白鳥について泳いでいるとき、カラスは巣を探して池の上を子ガラスを連れて」「白鳥のひなが、親白鳥について泳いでいるとき、カラスは巣を探して池の上を子ガラスを連れて飛び回っていた。」最初は楽ですが、終わりのほうはかなり難しくなり、最後の人を「撃沈」するために、どのように文を組み立てるかが難しくなります。駆け引きが生まれるわけです。

うまく切り抜けられたら、次はその人をスタートにして、新しい文章を組み立てていきます。シュールな文章ができることもあります。

「地口」といわれることばの意味や発音をかけたものも江戸時代から行われていました。祭りに競って飾った「地口あんどん」というのもあったそうです。宝暦元年(1751)ごろから江戸市中ではやったようで、4面あるあんどんの1面に絵を描き、裏面にその絵の謎解きをする形が多かったようです。俵の上に乗った弁財天と大黒天を描いた絵は、裏に回ると「弁天大黒俵の上」という文字があります。「べんてんだいこく、ヒョウのうえ」と読まないと何のことやら分かりません。「たわらのうえ」と読むと「しゃれがわからねえやつだ」とバカにされそうです。江戸子守歌の「でんでん太鼓に笙(しょう)の笛」という一節をもじったものです。

また、おなかの大きな女の人がお供をつれて歩いている絵は、「子をはらむものはお供を連れ」と文字があります。「遠からん者は音にも聞け」という武士の名乗りのもじりです、武士とつながりが薄い、身重の女を描くことで意外性が生まれます。何かをもじったものですが、見た人が何だろうと一生懸命考え、祭りの帰りになって「アアそうか、よくできている」となれば、作者は喜ぶことでしょう。残された資料を見ても、今では何のことやら分からないものもあります。しかし、遊びとしては、しゃれを考え、その絵を描くことという高度な技術が必要です。時間があっても、あるいは知恵があっても、絵を描くという難関があります。現代ではなかなか難しいかもしれませんが、コンピューターを使って、こういう遊びをすることも可能です。都筑道夫さんの「なめくじ長屋捕物帳」シリーズの一つに、都筑さんが考えた「地口あんどん」が載っています。

暇と知恵のある方は、これからことばを豊かに使っていく子どもたちと遊んではいかがでしょう。

長らくお読みいただいた「ことばウラオモテ」は、今回でひとまず終了となります。おつきあいいただきありがとうございます。

(メディア研究部・放送用語 柴田実)