ことばウラ・オモテ

かいしゅん・回春の買春は改悛すべき

平成11年5月18日に衆議院本会議に一つの法案が提出され、成立しました。

「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰および児童の保護等に関する法」いわゆる「買春防止法」です。

このとき、伊藤宗一郎議長、提案説明をした杉浦正健議員は、はっきりと「カイシュン」と発音していました。

これが、この法律を「カイシュンボウシホー」という根拠の一つになります。

1980年代後半の「買春ツアー」や、女子高校生の「援助交際」などにより、「売る」側ではなく、「買う」側の問題が大きく取り上げられるようになり、「売り、買い」の区別をする必要が出てきたことが大きな要因です。法律制定までさまざまな人々が熱心に活動をしていましたが、これらの関係者も「カイシュン」と言っていたと記憶しています。

辞書などでは、「売春」「買春」ともに「バイシュン」という読みだけを載せていました。

なぜ、「カイシュン」の読みが出てきたかは、同音異義、それも反対の意味を持つ語が同じ音ではまぎらわしいということがあったようです。関係者が考え出した新語ということになるわけです。

一方の意見として、「カイシュン」は訓読みと音読みが交じる湯桶(ゆとう)読みになり、あまり好ましい読みではないというものもあります。また、既に「回春」「改悛」などの別の意味のことばがあり、「回春」「買春」がいずれも一般の人が口にするのをはばかるたぐいのことばであることを考えると、「カイシュン」は認めるべきではないという意見を持つ方も少なからずありました。

一般の国語辞典やマスコミ関係の用字用語辞典には「カイシュン(買春)」が記載されているものも出てきました。広辞苑は同音の売春と区別する湯桶読みとしています。

以前は、「売る」側、それを管理する側が罪に問われ、「買う」側はあまりとがめ立てをされなかった社会風潮が、大きく変わったために、ことばとそれを記載する辞書のほうが遅れてしまった現象と見ることができます。

明らかに概念が違う事象を示すことばで、発音やアクセントが同じというのはことばの機能の「弁別性」という点からは好ましくないのはもちろんです。

「売春」を「ウリシュン」とするなら「カイシュン」と均衡はとれますが、慣用が強く、そうもいかないでしょう。

「買春」の実態がなくなって死語になるのが望ましいのですが、まだ無理なようです。

ことばが社会に定着するまでにはもう少し時間がかかると考えています。それまで、放送では「買春ツアー」「買春行為」などはきちんと捕捉説明をつけて表現したいものです。

(メディア研究部・放送用語 柴田 実)