最近気になる放送用語

「募金」?

「募金(を)する」というのは、おかしな言い方なのでしょうか。

街頭に箱を持って立つなどの「お金を集める側」の行為を指す言い方としては、まったく問題ありません。その反対に、お金を出す(寄付する)行為のことを「募金(を)する」と言うと、間違った言い方だと考える人もいます。ですが、「募金」に積極的に協力する人が日常的になった現在、このことばの新しい意味として「お金を寄付すること」というものを認める余地もあるのではないかと思っています。

解説

「募金」は字のとおり、「お金を募ること」という意味のことばです。「街頭募金」は街頭に立ってお金を募ること、「募金活動」はお金を募る活動です。これが、逆に「お金を出す」という意味でも使われるようになったのは、一説には1980年ごろから学校で広まったものだとも言われています(『岩波国語辞典 第7版』)。

なぜ「募金」が反対の意味でも使われるようになったのでしょうか。「募金」の反対語を辞書で調べてみると、「拠金( 醵金(きょきん))」「義援(義捐(ぎえん))」や「寄付」などが出てきます。ですが、「拠金(を)する」「義援(を)する」などは話しことばとして使うのには少々かたすぎます(ただし「義援金」はよく使われています)。また「寄付(を)する」については、人によっては自分が出す額が少ない場合には「寄付」とは言いにくいと感じる人もいます。なかなかしっくりする表現が見当たりません。このようなことから、その「すきま」を埋める言い方として、「募金」の新たな用法が一般的になってきたのだと思います。

ひとのためになることをしたいと思って募金に協力しているのでしょうから、その人たちが「きょう募金をしてきました」と言ったからといって、ことばづかいが間違っているなどと指摘するのは、私はヤボだと思います。いや、それでも自分が使うことばとしては気をつけておきたいという方には、たとえば次のような言い回しもあることをご紹介しておきます。

募金集めが始まった ⇒ 募金活動が始まった

集められた募金は… ⇒ 寄せられたお金(義援金)は…

募金を呼びかけています ⇒ 募金への協力を呼びかけています

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)