最近気になる放送用語

「~していただいてもよろしいですか」

「お名前をお書きいただいてもよろしいですか」という言い方は、敬語の使いすぎなのでしょうか。

「~していただいてもよろしいですか」という言い方は、中継番組など実際の放送でもたびたび耳にします。ことばづかいとして間違っているわけではありませんが、いわゆる「過剰敬語」だと感じる人もいるので注意が必要でしょう。たとえば「お名前をお書きいただけますか」という言い方でも十分に敬意を表せます。

解説

何か頼みごとをするときに、「~してもらってもいい?」というような言い方をする人が、さいきん増えているようです。たとえば、これまでであれば「見せて」「貸して」と直接的に言っていたような場面・間柄で、

「見せてもらってもいい?」「貸してもらってもいい?」

というような言い方がされるのをよく耳にします。

これは、相手にある動作(「見せる」「貸す」)をしてもらおうとするときに、「『~してもらってもいい』かどうか」というように一応相手の判断・許可をあおぐような形を取って、相手に「選択の余地」を形式的に与えることによって、一定の「気づかい」を表そうとするものだと考えることができます。「親しき仲にも礼儀あり」がふだんのことばづかいにも広がっていると言えるでしょうか。

この「~してもらってもいい?」をそのまま敬語的表現にしたものが「~していただいてもよろしいですか」です。NHK放送文化研究所で2007年にウェブ上でのアンケートをおこなってみたところ、「こちらにお名前をお書きいただいてもよろしいですか」という言い方に違和感を覚えるという人が、年代が上になるほど多くなっていることがわかりました。

世界のいろいろな言語で、「言い回しが長くなるほど敬意が高くなる」という傾向がみられます。「~していただいてもよろしいですか」についても、話し手としては高い敬意を示そうとしているのでしょう。しかし一方で、この長い言い方には(少なくとも現時点では)抵抗を感じる人もいることを意識しておいたほうがよいかと思います。

「こちらにお名前をお書きいただいてもよろしいですか」には違和感あり(ウェブ上アンケート、2007年6月~7月実施、1,837人回答)

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)