「平和」?「和平」?
2004.12.01
「平和」と「和平」とは、どのように違うのでしょうか。
意味の面と文法的な役割の面で違いがあります。
解説
まず意味の面について考えてみましょう。「平和」は、戦争や災害などがなく穏やかな「状態」を指します。いっぽう「和平」は、悪い状況から平和な状態になること、または平和な状態にすること、という「状態の変化」を表します。
この意味の違いは、複合語を作るときに「平和」と「和平」のどちらを使うか、ということとも関連してきます。『ことばのハンドブック』(平和・和平の項)に載っている例から挙げると、
○○主義、恒久○○
などは「平和」がふさわしく、
○○交渉、○○工作
などは「和平」が用いられるのが一般的です。
次に文法的な役割の面について説明すると、状態を示す「平和」のほうは、「平和な国」というように「~な」という形(形容動詞の連体形)をとることができますが、状態の変化を表す「和平」は「×和平な国」という言い方はできません。
「平和」と「和平」のように、漢字の順序が異なることばのペアは、日本語にはたくさんあります。そして、そのほとんどがそれぞれ違う意味を表します。
たとえば「材木」というのは木を一定の長さ・大きさに切った「具体的なもの」であるのに対して、「木材」は材質が「木」であるというところに焦点が置かれています。「木材からパルプを作る」とは言えますが、「×材木からパルプを作る」とはふつう言いません。
また「近接」というのは「すぐ近くにあること」という「状態」を示すのに対して、「接近」は「すぐ近くに行くこと」という「状態の変化」を表します。この違いは、「平和」と「和平」のペアとよく似ていますね。
頭の体操も兼ねて、次のことばを上下逆転させるとどのように意味が違ってくるか、考えてみてください。中には、細微な(微細な?)違いしかないものもあります。
「愛情・育成・移転・異変・運命・鋭気・栄光・液体・演出・王国・王女・会議・外国・会社・階段・害虫・回転・解読・外部・格別・学力・楽器・観客・感触・間食・奇数・急性・牛乳・制圧 ・・・」
来年もよろしくお願いいたします。平和な一年でありますように。