最近気になる放送用語

魚介類? 魚貝類?

「魚介類」と「魚貝類」とでは、どちらの書き方が正しいのでしょうか。

「魚貝類」という表記も誤りとは言えませんが、放送では「魚介類」を使うようにしています。

解説

まず「魚介類」についてお話しします。「介」という漢字は、よろいをつけた人の形を文字にしたものです。この「よろい」という意味が転じて、「介」の字は堅い甲羅を持つ生き物(貝、エビ、カニなど)を指すようになりました。そこから広がって、「魚介類」は魚類および貝類、エビ、カニだけでなく、甲羅のないイカ、タコ、ウニ、ナマコなども含めた水産物全般(ワカメなどの海藻は除く)の「総称」として定着しました。

次に「魚貝類」について説明します。「貝」という漢字は、音読みは「バイ」、訓読みが「かい」です。ですから、漢字3つとも音読みで統一するとすれば「魚貝類」は「ギョバイルイ」と読むことになります(なお「魚貝(ギョバイ)」ということばは、昔の史料には出てきます)。「魚貝類」を「ギョかいルイ」とするのは「重箱読み」というあまり一般的でない読み方で、おそらく「魚介類」の「介(カイ)」を「貝(かい)」と混同したものだと思われます。

また、厳密な意味で言えば「魚貝類」だと魚類と貝類しか指さず、エビやカニは含まれないことになってしまいます。

「総称」として使う場合は「魚介(ギョカイ)類」、魚類と貝類のみを指す場合には「魚貝(ギョバイ)類」、というように使い分ける方法もあるかもしれませんが、「魚貝(ギョバイ)」ということばは放送で使って通じるほど一般的なことばとは言えません。後者の場合にはむしろ「魚と貝」などとはっきり言ったほうがよいでしょう(『ことばのハンドブック』P.52)。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)