放送現場の疑問・視聴者の疑問

「一段落」の読みは? ○[イチダンラク]×[ヒト~]

「仕事が一段落する」などと言うときの「一段落」について、[イチダンラク]のほかに[ヒトダンラク]という言い方・読み方もよく耳にします。放送でも[ヒトダンラク]という読みを時たま聞くことがありますが…。

「一段落」の伝統的な読みは[イチダンラク]です。

解説

「一段落」は、文章の切れ目の「段落」に「一」を冠した熟語で、「一つの段落。ひとくぎり。転じて、ものごとがひとくぎりしてかたづくこと」(『広辞苑 第6版』岩波書店)を意味します。この「一段落」[イチダンラク]が[ヒト~]と誤って読まれる原因は、「一仕事」「一芝居」「一安心」「一工夫」「一苦労」「一騒動」など同じ語形をもつことばに[ヒト~]と読む語が多いことに加え、似た意味をもつ「一区切り」が[ヒトクキ゚リ]と読むこととも関係があるものとみられます。平成5(1993)年のNHK「ことばのゆれ調査」では、[イチダンラク]と読む人が8割いたのに対し[ヒトダンラク]と読む人が2割いました。

この「一段落」について、国語辞書の中には[イチダンラク]の項目・語釈の中に「『ひとだんらく』ともいう」などと補足している辞書もありますが、放送では伝統的な読みの[イチダンラク]を採っています。

「一段落」と並んで「一」を冠した語で誤読の多いことばには、次のような語があります。

  • 「一隅(を照らす)」   ○[イチク゚ー]       ×[ヒトスミ]
  • 「一日の長(がある)」 ○[イチジツノチョー]  ×[イチニチ~]
  • 「一矢(を報いる)」   ○[イッシ]×[イチヤ]  ×[ヒトヤ]

*このほか、「一」を冠した四字熟語のうち誤読の多い幾つかのことばの読みを以下に記します。

  • 「一言居士」 ○イチケ゚ンコジ     ×イチコ゚ン~  
  • 「一期一会」 ○イチコ゚イチエ     ×イッキ~
  • 「一言一句」 ○イチコ゚ンイック    ×イチケ゚ン~
  • 「一汁一菜」 ○イチジューイッサイ ×イチジル~
  • 「一世一代」 ○イッセイチダイ    ×イッセイ~

(『NHKことばのハンドブック 第2版』p.17~18)

(『NHK日本語発音アクセント辞典新版』p.49ほか参照)

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)