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放送現場の疑問・視聴者の疑問

「ジンクス」という語の使い方は?

番組の中で、「縁起のよいもの」「縁起のよい言い伝え」などという意味で「ジンクス」ということばを使いたいのですが、どうでしょうか。

「ジンクス」の本来の意味は、「縁起の悪いもの・こと」です。「縁起のよいもの」などという意味で用いるのは的確ではありません。

解説

確かに、「ジンクス」という語の日本での使われ方には、「縁起のよいもの」について言うような例も多く見聞きします。国語辞書の中にも、この語について「縁起の悪いこと」と「縁起のよいこと」の両方の意味を示しているものもあります。しかし、「jinx」を英語の辞書で引くと「縁起の悪い物[事、人];不運続き」(『研究社新英和大辞典 第6版』)「縁起の悪い人[もの];悪運」(『ランダムハウス英和大辞典 第2版』小学館)などと記してあるように「ジンクス」は「(不運を招く)縁起の悪いもの(こと・人)」というのが本来の意味です。

このため、「ジンクス」について国内の新聞社や通信社は『用字用語集』や『用語ハンドブック』で「誤りやすい慣用語句」の1つにあげています。(*注)

放送で「よいジンクスがある」「ジンクスどおり、うまくいった」などと、「ジンクス」を「縁起のよいもの(こと)」という意味で用いるのは的確な言い方ではありません。このような場合、別の語を用いた言い方・表現を工夫するか、「ジンクスを破る」「ジンクスどおりの悪い結果が出た」など、本来の意味や語法に基づいた言い方をしたほうがよいでしょう。

ところで、ニュースや番組の用字用語・伝え方の大原則は、視聴者にわかりやすく親しみやすい言い方や表記をすることです。その際、基本的に次のようなことを心がけたいものです。

  • (1)正しく的確なことば・日本語を使う。
  • (2)外来語・カタカナ語を使う場合でも、できるだけ言い添えや説明をする。
  • (3)外来語・カタカナ語の本来の意味や使い方に基づいた表現をする。

(『NHKことばのハンドブック 第2版』p.108参照)

(*注)「『ジンクス』は元来『縁起が悪いもの』『けちのつくもの』の意。『縁起がよい』意味で許容している辞書もあるが、使わないほうがよい」(『新聞用語集 2007年版』日本新聞協会)、「☆ジンクス 縁起が悪いもの、けちが付くものの意。『ジンクスを破る』などと使う。『縁起がよい』意味での使用は不適当」(『最新用字用語ブック 第5版』時事通信社)など。

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)