放送現場の疑問・視聴者の疑問

「喧喧囂囂(けんけんごうごう)」と 「侃侃諤諤(かんかんがくがく)」

先日のテレビ番組で、「(この問題をめぐって)ケンケンガクガクの議論になりました」という言い方を耳にしましたが、これは間違った言い方ではないでしょうか。

[ケンケンガクガク]は、「喧喧囂囂[ケンケンゴーゴー]」と「侃侃諤諤[カンカンガクガク]」の混交表現です。誤りやすい慣用語句の1つです。

解説

「喧喧囂囂(けんけんごうごう)」の「喧」と「囂」には、ともに「かまびすしい」「やかましい」「さわがしい」という意味があります。この文字を重ねた[ケンケンゴーゴー]は、「口やかましく騒ぎたてるさま」「たくさんの人がやかましくしゃべる様子」を表すことばです。一方、「侃侃諤諤(かんかんがくがく)」の「侃」には「性格などが強いさま、のびのびとしてひるまないさま」、「諤」には「正しいことを遠慮せずにいう。ごつごつと直言する」(『学研 漢字源』)という意味があります。この文字を使った[カンカンガクガク]は、「正論を吐いて屈しないさま」「みんなが率直に意見を述べて議論している様子」を表すことばです。

ご指摘の[ケンケンガクガク]という言い方は、いずれも4文字で構成され、語形と語感や響きも似ている「喧喧囂囂(けんけんごうごう)」と「侃侃諤諤(かんかんがくがく)」という語が混同して用いられた混交表現です。国内の主な新聞社や通信社では、「用語ハンドブック」や「用字用語集」の中の「誤りやすい用字用語・慣用語句」の1つに「けんけんがくがく」をあげています。

放送にあたっては①[ケンケンガクガク]という言い方は混交表現であり、正しい使い方とは言えないこと②「喧喧囂囂[ケンケンゴーゴー]」と「侃侃諤諤[カンカンガクガク]」は、それぞれ意味が違うことを留意しておく必要があります。

  • 「喧」「囂」「侃」「諤」は、ともに常用漢字表にはない字(表外字)ですので、放送での表記は、「けんけんごうごう」「かんかんがくがく」です。番組の制作上、漢字を使う必要がある場合はルビをふって漢字を使うこともあります。

(『ことばのハンドブック』P60、『新用字用語辞典』P108、P166参照)

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)