放送現場の疑問・視聴者の疑問

名月は「中秋」?「仲秋」?

旧暦の8月15日は[チューシューのメイケ°ツ]ですが、雑誌などの活字メディアでは、「中秋の名月」のほかに、「仲秋の名月」などという書き方も見ます。放送では、どうなっているのでしょうか。

「中秋の名月」と表記しています。

解説

[チューシュー]には「中秋」と「仲秋」、[メイケ°ツ]にも「名月」と「明月」の書き方があります。このため、[チューシューのメイケ°ツ]も従来「中秋の名月」のほか、「仲秋の名月」「中秋の明月」「仲秋の明月」などの書き方があります。放送では表記のしかたを決めていませんでしたが、現在は、「中秋の名月」に表記を統一しています。

また、「おぼろ月夜」「おぼろ月」「おぼろ」は、春のことばですので、「中秋の名月」の中継などでは使いません。

ちなみに、旧暦8月15日(ことしは9月12日)「十五夜・満月」の前日14日の夜は「待宵<まつよい>」、以下16日から20日まで順に「十六夜<いざよい>」、「立待月<たちまちづき>」「居待月>いまちづき>」「臥待月<ふしまちづき>」「更待月<ふけまちづき>」という言い方があります。このほか、この満月の夜に雲などのために月が見られないときを「無月<むげつ>(中秋無月)」「曇る名月」「月の雲」、雨で見られないときを「雨月<うげつ>」「雨名月<あめめいげつ>」「月の雨」など、さまざまな言い方があります。それだけ古くからの日本人の月への思い、その風情を興じる心持ちがうかがえます。

(改訂版気象ハンドブックP138、ことばのハンドブックP31参照)

 「名月や 畳の上に松の影」 (其角)

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)