NHK世論調査における調査方法論研究の系譜

公開:2017年1月30日

NHKでは,調査方法論の研究を,世論調査の科学性を維持するために行ってきた。サンプルの代表性を保つためにサンプリングや調査不能の研究を行い,調査を正確に実施するために調査方式の研究を行い,調査の目的にかなうような質問を作成するために質問紙法の研究などを行ってきた。

NHKで,視聴率調査の前身ともいえる「第1回全国ラジオ調査」が行われたのは,1932年までさかのぼるが,ランダム・サンプリングでサンプルを選ぶ世論調査が行われたのは1948年11月の「全国放送番組世論調査」が最初である。この調査は,1947年9月より1年余り,サンプリングの方法について研究を行った後に実施された。この研究が,NHKで調査方法論研究が行われた最初であると考えられる。

調査方法論の研究は,調査方法を変更して改善するためや,調査環境の悪化などに対応するためや,精度の向上や調査方法を精錬するために行われてきた。NHKが行った調査方法論の研究のほとんどの成果は,NHK放送文化研究所が発行する月報(『放送研究と調査』)や年報などに報告されている。これらの研究を概観することは,今後もNHKの世論調査の精度を維持し,調査方法論の研究を続けていくために役立つであろう。そこで,1947年以降,NHKが調査方法論に関するどのような研究を行ってきたのか,サンプリング,調査有効率と不能理由,調査方式,質問紙法に関する研究について,報告されたものを中心にたどり,NHK世論調査における精度を維持する努力について整理し概観する。

調査環境は,調査を始めた頃と比べて,日々,厳しくなってきている。見知らぬ人が家に訪ねてくることを不快に思う人が増え,調査が公共に役立つような有用性があると思う人も少なくなっている。それに合わせて調査方式を変える必要が生じることもあり,今後はさらに,調査方法論研究の重要性が高まっていくと考えられる。

世論調査部 小野寺典子

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