放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

韓国,KBS新理事長にイ・インホ氏選出

KBS理事会は9月5日,ソウル大名誉教授のイ・インホ(李仁浩)氏(78)を新理事長に選出した。イ氏は女性の歴史学者で,これまでに駐フィンランド大使や駐ロシア大使を歴任した。KBS理事長に女性が選出されたのは今回が初めてである。イ氏に関しては,野党やKBSの労働組合などから,日本による植民地支配を美化するなど偏った歴史観を持っており,公営放送の理事長としては不適切だと指摘する声が出ていた。このため,5日の理事会でも11人の委員のうち,与党側推薦の7人だけが出席して選出した。新理事長の任期は,8月に辞任した前理事長の残りの任期である2015年8月末までとなっている。

韓国,KBSの「わい曲報道」に「勧告」

韓国の放送通信審議委員会(KCSC)は9月4日,KBSが報道したムン・チャングク(文昌克)元首相候補の発言に関する内容が公正さや客観性を欠いていたとして,KBSに法的処分よりは軽い行政指導にあたる「勧告」を出した。問題となったのは,6月にKBSの看板ニュース『ニュース9』が取り上げたムン氏の講演内容で,「日本の植民地支配は神の意志」「わが民族のDNAには怠け心がある」などとムン氏の発言の一部を伝え,「ムン候補の歴史認識がうかがえる講演だが,波紋が予想される」と報じた。しかし,講演の他の部分では韓民族の勤勉さについての言及などもあった。また,ムン氏がその後首相指名を辞退したのはこの報道がきっかけとの見方も出ていた。KCSCは,KBSが「講演の一部の発言だけを編集して伝えたことで,その趣旨をわい曲し,視聴者を混乱させた」として勧告処分を決めた。

台湾,「原住民テレビ」のトップが辞任

台湾の人口の2%を占める先住民向けのテレビ局「原住民テレビ」のトップであるマヤウ・ビホ(Mayaw Bi ho)局長が9月26日,「原住民テレビにはメディアとしての十分な独立性がない」ことを不服として辞任した。原住民テレビは,先住民の言語や文化を守ることなどを目的に2005年に放送を開始,2007年には公共テレビを中心とする公共放送グループの一員となった。その後,先住民の間から「自らの手による運営」を主張する声が出たため,2014年1月から公共放送グループを離脱し,先住民の組織である「原住民族文化事業基金会」が運営主体となった。ところがマヤウ・ビホ氏によると,運営にあたって政治家の介入が頻発,馬英九総統の出席する行事の生中継を要求されたほか,キャスターの人選などにもさまざまな干渉が行われたという。

比,政府所管テレビ局の民営化推進

フィリピンの大統領府通信グループ(PCOO)は9月4日,政府が100%出資するテレビ局IBCの民営化手続きを本格化させていることを明らかにした。これは2010年8月に発表された,政府所管の3つのテレビ局PTNI,IBC,RPNのうち,IBC,RPNの2局を売却する計画の一環で,RPNについては政府が所有する20.8%の株式を除いて,すでに民間企業へ売却済みである。

パキスタン,デモ隊がPTVを一時占拠

パキスタンの首都イスラマバードで,第2野党PTIと宗教政党PATの支持者らがシャリフ首相の退陣を求めて2週間近くデモを続ける中,9月1日,公共放送PTVの局舎に棒などを手にしたデモ隊数百人が乱入,ニュースチャンネルPTV Newsと国際放送チャンネルPTV Worldの放送が30分以上中断される事態となった。警備にあたっていた軍の説得でデモ隊は撤収したが,騒ぎでケーブルなどの放送機材が一部損傷し,カメラが盗まれるなどした。乱入したデモ隊は軍を支持するスローガンを叫んでいたとも伝えられ,政権との軋轢が噂されている軍が,PTVを警備している最中に起きた乱入事件に対して,懸念の声が広がった。

インド,放送事業者団体会長にStar IndiaのCEOを選出

インドの大手放送事業者団体IBF(Indian Broadcasting Foundation)は,9月10日に開かれた第15回年次総会で,次期会長に21st Century Foxの現地法人Star IndiaのCEOウダエ・シャンカル(Uday Shankar)氏を選出した。シャンカル氏は2010~2012年にもIBF会長を務めている。