放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英BBCワールドサービスの財源,受信許可料に移行

イギリスの公共放送BBCの国際放送BBCワールドサービスの主な財源が,4月に政府交付金から受信許可料へと切り替わった。BBCワールドサービスは1932年に設立され,現在はラジオ,テレビ,インターネットにより合計28言語で情報発信を行っている。2010年,保守系のキャメロン連立政権が誕生し,財政赤字の解消策の1つとして交付金の大幅削減が決まった。この変更を前に英下院外交委員会は3月31日に発表した報告書の中で,BBCのワールドサービスは「徐々に弱体化する」おそれがあるとしたが,BBCは「政治的な意図で交付金を削減した政府よりBBCはうまくワールドサービスを守っていく。ワールドサービスの将来は安泰だ」と語った。ワールドサービスの2014年度予算は2億4,500万ポンド(約421億円)。

英BBC iPlayer,30日間に延長へ

イギリスの公共放送BBCの監督機関BBCトラストは4月4日,執行部から提案された見逃しサービスiPlayerの利用期間を現在の放送後7日間から30日間まで延長することを承認した。iPlayerは,1日約1,070万件の利用があるが,91%の利用者が延長に関心を示しており,BBCトラストでは,サービスの拡充は視聴者にとって利益になるとしている。延長は今年(2014年)の夏からの予定。これに伴い,シリーズドラマを30日間ダウンロードして保存するシリーズ・スタッキングは廃止される。

仏フランステレビジョン,8,500万ユーロの赤字

フランスの公共放送フランステレビジョン(FT)の経営委員会は4月11日,8,500万ユーロ(約120億円)の赤字となる2013年度決算を承認した。広告収入の落ち込みなどから,2013年度の赤字は1億3,200万ユーロに達すると予測されていたが,予測より4,700万ユーロ少なく留まった。その理由についてFTは,情報番組について400万ユーロ,スポーツ番組については150万ユーロ,制作費を削減したこと,2012年9月から始めた合理化で,1万500人の要員が1万120人の体制に減ったことなどを挙げている。FTは今後さらに340人の希望退職を募り,2015年度には9,750人の要員体制にすると労働組合側に提案したが,組合側は4月14日,これを拒否した。政府はFTに対して,2015年度の決算で収支均衡を取り戻すよう求めている。

独ネットTVプラットフォームMagine,本サービス開始

スウェーデンの事業者マジン(Magine)は4月24日,インターネット上でテレビ放送を同時配信するプラットフォーム「Magine TV」の提供をドイツで正式に開始した。公共放送ARD,ZDF,商業放送のRTL,プロジーベンザットアインスなど主要テレビ局を含めた約60のチャンネルが,スマートフォン,タブレット,パソコン,スマートテレビで無料で視聴できる。いくつかのチャンネルでは,番組はすべてクラウド上に保存され,一時停止や巻き戻し,過去7日間の番組の視聴もできる。

伊周波数オークション,1社のみの応募

イタリアの周波数行政を所管する経済発展省(MiSE)は,地上デジタル放送への移行で空いたテレビ周波数の3つの多重周波数帯(MUX)の入札を2月中旬に開始し,4月15日に締め切った。その結果,全国テレビLa7を運営するCairo Communicationのみが応募,今後の審査を経て,実質MiSE が設定した最低入札額で落札するとみられる。公共放送RAI,大手民放Mediaset,Telecom Italia Mediaの3グループは,既に3つ以上のMUXを保有する事業者として除外されていた。

オーストリア憲法裁,ORFのSNS使用は合憲

オーストリア憲法裁判所は,公共放送ORFによるフェイスブックなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の使用を禁止した連邦通信評議会の措置を違憲とする決定を行った。4月2日の決定で,憲法裁は,「SNSの主旨は,放送局と視聴者との相互のコミュニケーションの機会を図ることにある」として,連邦通信評議会の訴えを退けた。ORFのSNS使用をめぐっては,2013年7月に,憲法裁が,ORFがSNSにリンクを張ったりSNSと提携したりすることを禁止することは,言論の自由と放送の自由に抵触するとの決定を下したが,連邦通信評議会が,SNSの恒常的な使用はORF法に反すると,改めて,憲法裁の判断を求めていた。