放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英BBC元会長,デジタルメディア構想失敗で謝罪

多額の資金をつぎ込みながら失敗に終わったイギリスの公共放送BBCのデジタルメディア構想(DMI)について,元会長マーク・トンプソン氏が2月3日,英下院の公聴会で謝罪した。DMI構想は,BBCの全ての映像素材をデジタル化して一括管理することを目指し,トンプソン氏が会長時代の2008年から,約1億ポンド(約170億円)をかけ推進してきたが,採算に合わないとして,ホール新会長が2013年,計画の中止を決断した。

英BBC国際放送,若者向け番組など強化へ

BBCの国際放送BBCワールド・サービスの財源は,4月から従来の外務省交付金に代わって受信許可料になる。これを前にピーター・ホロックスBBCグローバルニュース局長は2月18日,2014年度以降の事業計画を発表し,若者向けのニュース番組の開発や,携帯端末を含め多メディアで展開できる番組の開発などを進めるとし,2014年度は新規事業に800万ポンド(約14億円)を投じるとした。一方,こうした投資に備えるため今後3年間で1,500万ポンド(約26億円)の経費削減が必要になることから,短波放送の削減や業務の効率化を進めるとしている。

英BBC会長,受信許可料支払い義務対象の改正を提案

イギリスの公共放送BBCのトニー・ホール会長は2月26日,オックスフォード・メディア・コンベンションで講演し,受信許可料の支払い義務は,リアルタイム視聴もオンデマンドによる時差視聴も,視聴形態にかかわらず対象とすべきであると提案した。見逃しサービスiPlayerでは,放送と同時のサイマル・ストリーミングが行われており,現行法による支払い義務は,このネット上のライブ視聴のみが対象となり,オンデマンドによる時差視聴しか利用しない場合は対象外である。ホール会長は,テレビ視聴の90%はリアルタイム視聴が占めており,現行制度は継続可能であるとしたうえ,受信許可料制度は技術革新と視聴の変化に対応し,近代化する余地があると述べた。

仏大手商業放送,米ネットの参入に脅威表明

フランスの既存の大手商業放送3社,TF1,Canal+,M6は2014年2月11日,フィリペティ文化・コミュニケーション大臣に3社長の連名で書簡を送り,このなかでアメリカのGoogle,Apple,Netflix,Amazon,Facebookの名をあげ,巨大ネット事業者のフランス国内での事業拡大に脅威を表明するとともに,大臣に国内メディア産業の擁護を訴えた。書簡で3社長は,「我々が直面しているのは単なる経済危機ではなく,社の存続を脅かす産業界の激変だ」と述べ,タックスヘイブンに会社登録しているアメリカのネット事業者らに厳しい課税措置をとる一方,国内の視聴覚メディアの広告規制などを緩和するよう求めている。

独KEF,放送負担金値下げを正式に答申

ドイツの公共放送の財源需要を審査する独立委員会KEFは2月26日,2015年からの放送負担金の額を73セント(約100円)値下げし,月額17.25ユーロ(約2,420円)にすべきとの答申を州政府に正式に提出した。KEFによれば,2013年1月に全世帯徴収方式に移行した結果,2016年までの4年間の負担金収入は,当初の公共放送の予測を11億4,590万ユーロ(約1,600億円)上回る見込みである。KEFは,この半分を値下げに充て,残りは2017年に再び値上げが必要になった場合に,上げ幅を抑えるための積立金にすべきだとした。答申の内容は,KEFは2013年12月に予備的な見解として発表していたが,その後,公共放送と州政府との意見交換を経て,今回正式な発表となった。

伊,RAI「サンレモ音楽祭2014」,視聴シェアが低迷

公共放送RAIの「第64回サンレモ音楽祭」が2月18日~22日に放送され,5日間の平均視聴シェアは,前年(2013年)比でマイナス7.9ポイントと,前年を大きく下回る39.3%だったことが分かった。シェアが40%を割り込んだのは2008年以来。RAI側は「今年の視聴率は最低でも45%」とスポンサーに対して強気な姿勢を見せていただけに,スポンサー側の損害額は約600万ユーロ(約8 億4,000万円)との試算や,広告主に賠償をすべきとの批判まであがっている。RAIは広報室を通じ,広告主に対する補償をする事実はないと公式に否定した。