放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

中国,“企業の不正”報道の記者を逮捕

中国で,大手重機会社の“不正”を報道していた新聞記者が10月18日,警察に逮捕された。逮捕されたのは広州の「新快報」の陳永洲記者で,陳記者は1年前から湖南省の重機会社「中聯重科」の粉飾決算疑惑を批判する記事を十数回にわたり執筆していた。これに対し中聯重科は「事実無根」と反発,会社の地元である湖南省の警察当局は「商業信用損壊罪」で陳記者を逮捕した。これを受け新快報は新聞の一面に記者の釈放を要求する記事を掲載,他のメディアや世論も新快報を支持した。ところが陳記者は26日,突如中国中央テレビのインタビューに登場,第三者から50万元(約800万円)の金を受け取り,自ら裏付けの取材をせず記事を書いたと認めた。新快報は態度を一転し28日付けの朝刊で謝罪したが,事件の背景には湖南省の重機会社同士の対立も指摘され,真相はいまだ不明である。

次期ABU会長にKBS社長を選出

アジア太平洋地域の放送局で構成するABU(ア ジア太平洋放送連合)の新しい会長に,韓国KBSのキル・ファンヨン(吉桓永)社長が10月29日,選出された。キル社長は今後の抱負について「デジタル時代の放送サービスを改善し,変化する放送環境を主導することができるよう,あらゆる努力をする」と述べた。任期は2014年1月から2016年末までの3年間となっている。

韓国,地上放送のドラマに「67分ルール」

韓国の地上放送3局は,10月21日から広告を除く1話分のドラマ放送時間を,これまでの72分から67分に減らすことで合意した。KBS,MBC,SBSの3局は,かつて視聴率競争でドラマの放送時間が長くなっているとの指摘を受け,2008年に1話を72分に定めたが,守られないケースが多かった。今回の合意は,ドラマ制作費の急激な上昇の中で,放送時間を短縮してドラマの完成度を高める狙いもあるとの指摘が出ている。

比,地デジは日本方式を採用へ

フィリピンの国家電気通信委員会(NTC)は10月16日,同国の地上デジタルテレビ放送方式の規格を,いわゆる日本方式(ISDB-T)で進めると宣言した。NTCは2010年に,アジアの国としては初めて日本方式の採用をいったん決めたが,翌2011年に大統領府がいわゆるヨーロッパ方式(DVB-T2)の再検討を指示していた。日本方式が選ばれたのは,同一の送信施設で,音声・映像・データをテレビや携帯端末に送れる柔軟なシステムであるほか,地震や台風などの自然災害に関する早期警報にも使えるためで,NTCは第2世代の地デジ規格の登場やセットトップボックス(STB)価格の推移など最新の評価も参考にしつつ,日本方式を選んだとしている。

インド,教育テレビ50ch新設構想を発表

インドの人材開発省は10月8日,「全国を1つの大きな教室にする」との構想に基づき,2014年1月にもテレビ50チャンネルからなる新たな教育放送を開始すると発表した。放送は,公共放送機関「インド放送協会」が運営する無料の衛星放送DDDirect+を通じ,事前収録方式である既存の教育テレビGyan Darshanとは異なり生放送で行われ,双方向サービスに力点が置かれるという。この新たな放送を通じ名門インド工科大学(IITs)をはじめとする多数の大学やインディラ・ガンディー国立公開大学(IGNOU)が全国の大学や専門学校と結ばれ,特に技術教育の分野での大きな貢献が期待されている。人材開発省は,将来的にはチャンネル数を1,000まで増やすとしている。

パキスタン,CATV事業者が衛星放送の違法視聴取り締まり強化要求

パキスタン全土のケーブルテレビ事業者でつくる団体COAPは10月4日,インドの衛星放送ディッシュTVの視聴に使われる機器が国内で既に200万台以上も違法販売されたとして,販売の即時禁止を求める声明を発表した。パキスタンではインドの衛星放送を視聴することは違法とされているが,コンテンツに魅力があり映像も鮮明なインドの衛星放送をひそかに視聴する世帯は増え続けている。