放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

米FCC,放送局の外資所有規制の緩和を検討

FCC(連邦通信委員会)のクライバーン委員長代理は10月24日,現在25%を上限としている放送事業者の外資比率の緩和を検討することを明らかにした。メディア企業への外資の上限は「1934年通信法」で規定されており,FCCは具体的な案件に応じてこの規制を免除する権限をもつが,実際に免除した例はほとんどない。不況の影響などで放送事業者の業績不振が続く中,同委員長代理は外資導入を促したい考えで,11月24日の公開ミーティングで議題に取り上げることにしている。

米UnivisionとABC,共同で英語チャンネル開設

アメリカ最大手のスペイン語テレビ局UnivisionとABCネットワークは10月28日,共同で英語のテレビチャンネルFusionの放送を開始した。Fusionは,ニュースや報道,娯楽番組などで編成され,ヒスパニック系の若者を主なターゲットとしてケーブルテレビなどで2,000万世帯に配信されている。アメリカではヒスパニック人口が5,000万を超えてなお増加を続けており,中でもアメリカ生まれで英語を話す若者が増えている。今回の動きもそうしたヒスパニック社会の変化に対応したものとして注目されている。

米FCCの2委員を上院が承認

連邦議会上院は10月29日, オバマ大統領に指名されたあと承認手続きがとられていなかったFCCのトム・ウィーラー委員長(民主)と,マイケル・オライリー委員(共和)の2人を承認した。共和党のクルズ上院議員が,ウィーラー氏のテレビ政治広告に関する見解を質し,態度を保留して承認が遅れていたもので,FCCは5か月ぶりに5人の委員が揃ったことになる。ウィーラー氏はケーブルテレビや通信業界,インターネット事業者の団体でトップを務めるなど幅広い経験をもっており,2014年に実施が予定されている大規模な周波数オークションなどFCCが直面する様々な課題に手腕を発揮することが期待されている。

カナダ,産業大臣が“バンドル”批判の発言

カナダ産業省(Industry Ministry)のジェームズ・ムアー大臣は,ケーブルテレビや衛星放送事業者が多くのチャンネルをまとめて視聴者に契約させるバンドル方式をやめ,見たいものだけを選べるアラカルト方式を取り入れるべきだとする考えを示した。10月13日に放送された商業放送CTVの政治討論番組の中で述べたもの。カナダや隣国アメリカではインターネット動画配信の普及にともない,料金の高いケーブルや衛星の契約を解除する世帯が増えている。ムアー大臣は「テレビの視聴形態は変わってきており,利用者優先のサービスをめざすべき時だ」と述べた。ケベック州の大手ケーブルテレビ会社ビデオトロンでは,一部のチャンネルを利用者自身が自由に選べるサービスを最近,開始している。

ホンジュラス,地デジ日本方式採用決定

中米のホンジュラスは地上デジタルテレビ放送に日本方式(ISDB-T)を採用することを決定し,9月26日付の官報で発表した。ホンジュラスは2007年に米国方式(ATSC)の採用を一度決めていたが,中南米で日本方式採用が相次いだことから2013年になって再検討を開始し,今回の決定に至った。海外で日本方式採用を決めたのはこれで15か国になり,中南米では12か国となった。

アルゼンチン,最高裁がメディア法に合憲判決

アルゼンチンの最高裁は10月29日,政府と大手マスコミとの間で合憲性が争われてきたメディア法(視聴覚コミュニケーションサービス法)を合憲とする判決を下した。2009年に成立した同法は,ひとつの放送事業者が所有できる事業免許や放送局の数を制限しており,大手企業にとっては事業の大幅な縮小を余儀なくされる内容となっている。そのため最大手のメディア企業Clarínが,同法は所有権を侵害し憲法違反であるとして提訴し,事業免許の制限等に関する条項は4年にわたって施行が停止されていた。同法をめぐっては,報道の自由の侵害を懸念する声とメディアの寡占状態解消を歓迎する声とがあり,国論を二分していた。