放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

台湾,公共テレビ理事長に国民党員選出

台湾公共テレビ(PTS)は7月29日,理事会を開き,新しい理事長に国民党員の 劭玉銘しょうぎょくめい 氏を選出した。劭氏は1987年から4年間,メディアを管轄する行政院新聞局長を務めた長老で,6月の理事候補審査委員会で野党系委員の多数の支持も得て承認された。しかし,新聞局長時代にテレビ局の女性キャスターとの不倫が露見した経緯があり,かつ現役の国民党員である劭氏が公共テレビのトップを務めることに対し,審査委員の中には反対の声もあった。メディアNGOの「媒体改造学社」は声明を発表し,新理事長の政党色が強いことを指摘した上で,公共テレビの「独立自主」を尊重するよう呼び掛けた。

中国,歌謡コンテスト番組抑制へ

中国の国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局は7月24日,最近流行している歌謡コンテスト番組について,番組形態の多様化のためとして放送を抑制する方針を打ち出した。中国では浙江テレビがオランダの歌謡番組『The Voice』の番組フォーマットを購入して始めた『中国好声音』が大ヒットしたのを受け,2013年に入って同様の番組が急増している。このため当局は,全国向けチャンネルでは今後一定期間,新規の歌謡コンテスト番組の放送を認めない他,既に制作を始めた番組については,放送開始を遅らせるよう各テレビ局に求めている。こうした規制の背景には,歌謡コンテスト番組の氾濫が,習近平新政権が打ち出した「軽薄な風潮に反対し,勤倹節約を重んじる」との方針に反するとの批判があると見られている。

韓国,KCCが事業計画不履行のテレビ5社に是正命令へ

韓国のメディア規制監督機関であるKCC(韓国放送通信委員会)は7月9日,ケーブルテレビや衛星放送向けの総合編成チャンネル4社(TV 朝鮮,チャンネルA,JTBC,MBN)とニュース専門チャンネル1社(ニュースY)について,2012年度の事業計画を十分履行していないとして8月に是正命令を出す方針を示した。KCCによると,このうちJTBCは,当初提出した計画では再放送比率が5.6%だったものの,実際には59.0%と再放送の割合が最も高く,またTV朝鮮とチャンネルAも放送時間の半分以上が再放送となっていた。また,当初掲げたコンテンツ投資規模も,TV朝鮮が計画の38%にとどまったほか,その他のチャンネルについても投資額が当初の計画を下回る結果となった。

インド,DDが地域言語チャンネル増加へ

インドの公共テレビ局Doordarshan(DD)のトップであるトゥリプラーリー・シャラン局長は7月9日,国内地域言語による24時間衛星チャンネル(RLSC)を現在の11チャンネルから15チャンネルに増やすことを明らかにした。新設の4チャンネルは現在パトナ(ビハール州),ボパール(マッディヤ・プラデーシュ州),ジャイプール(ラージャスターン州),ラクナウ(ウッタル・プラデーシュ州)の各拠点局で試験放送されている。

エジプト,モルシ大統領支持のTV局弾圧

エジプトでは7月3日,軍がモルシ大統領の解任を発表した直後,大統領の支持母体のムスリム同胞団が所有する衛星テレビ局Misr25に加え,同政権支持を強めていたイスラム原理主義グループ・サラフィ派の衛星テレビ局Al-HafizとAl-Nasが相次いで閉鎖に追い込まれた。また同日,親モルシ派として知られるアルジャジーラのエジプト向け放送を行っているAl-Jazeera Mubashir Misrのカイロ支局も,生放送中に治安部隊の妨害を受け,支局員数人が拘束された。

イスラエル,初の国際TVニュース局が開局

英語・フランス語・アラビア語を使用する,イスラエルでは初めての24時間衛星TVニュースチャンネルi24Newsが,7月17日,本放送を開始した。i24Newsは拠点をテルアビブ近郊の港湾都市ジャッファ(Jaffa)に置き,当面はヨーロッパ・アフリカ・中東向けに放送するが,2014年にはアメリカ向け放送も計画している。運営は全て民間資金で賄われ,イスラエル政府の支援は受けない方針で,アルジャジーラやFrance24,BBC,CNNなど他の国際ニュースチャンネルとは異なる視点で,イスラエルを偏見なく客観的に伝えるとしている。