放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英BBC トラスト,オンライン/ 双方向の見直し

イギリスの公共放送BBCの監督機関であるBBCトラストは5月20日,オンラインとテレビ双方向サービスのRed Buttonの現状を検証し,各サービスの実績を評価する一方,オンラインによるローカルニュースの提供は,全国や国際ニュースに比べ十分ではないと改善を求めた。また,BBCトラストは,2つのサービスについてこれまで別個のサービス免許によって規制・監督してきたが,1つの免許に統合する方針をまとめ,視聴者の意見の募集を開始した。

仏,DVD・VOD課税は不当と欧州委に告発

欧州委員会は5月27日,DVDの販売やVODサービスの売り上げに対してフランス政府が行っている課税は不当だとする訴えがあったことを明らかにした。欧州委員会のスポークスマンは「我々はこの件について調査を開始したが,告発者は明らかにできない」としている。フランス政府は,映画など視聴覚作品の制作支援を行っているCNC(国立映画センター)の予算に充てるためとしてDVDの販売収入やVODサービスの総売り上げに対して2%の税を事業者に課している。日刊の経済紙レゼコーによると告発した側は「フランス政府はこの税収を国庫に組み入れ,映画制作支援以外の予算にも使っており不当だ」と主張している。

独ARD,ウェブサイトのデザインを一新

ドイツの公共放送ARDは4月29日,ウェブサイトのデザインを新しくしたと発表した。新デザインでは,パソコン,スマートフォン,タブレット型端末など画面の大きさの異なる端末でも,自動的に大きさに応じて読みやすい形で表示される。また,ARDのニュースポータルサイト「tagesschau.de」では,新聞社のサービスと差別化するため,従来よりも動画や音声のコンテンツを強調するデザインにし,文章記事については動画・音声コンテンツとの関連性をより明確にした。これはケルン地方裁判所が2012年9月に,ARDが提供するtagesschau.deの閲覧用のスマートフォンアプリについて,民業圧迫になりうる「新聞・雑誌類似サービス」であり違法とする判決を下したことを踏まえたもの。

伊Mediaset,ItaliaOnlineとネット動画広告で合意

イタリアの大手商業テレビグループMediasetは5月9日, 同グループの広告会社Publitalia'80とポータル最大手ItaliaOnlineとの間で「ネット動画広告」枠の販売について合意したと発表した。合意では,Mediasetの番組コンテンツをItaliaOnlineが運営する2つの主要ポータルサイトLibero.it,Virgilio.itや関連サイト上で動画配信し,その動画内での広告枠の販売をPublitalia が行う。この合意により,Mediaset側はインターネット上での動画広告収入を拡大し,ItaliaOnline側はコンテンツの拡充をはかる狙い。両ポータルサイトを合わせた市場シェアは60%を超える。

スイス公共放送,インターネットサービス範囲制限緩和

スイス連邦政府は5月1日,公共放送SRG SSRに対する免許を改訂し,インターネットサービスについてこれまでの制限を一部緩和した。SRG SSRは今後,放送番組に関係のない文章コンテンツもウェブサイトで提供することができる。ただし,民間の新聞社のサービスを圧迫しないよう,番組に関係のない記事は1,000文字以下とし,また文章コンテンツの総分量の3分の2は番組関連のものでなければならないとされた。また,スポーツなどの重要なイベントをインターネットでライブ配信することは,これまではテレビ放送との同時配信としてのみ認められていたが,今後はインターネット単独で行うことができる。

ロシア初の公共テレビが放送開始

ロシアで初めての公共テレビOTRが5月19日,放送を開始した。OTRは2011年,メドベージェフ首相(当時大統領)が設立計画を発表し,広告のない公共放送として,市民社会の発展や教育などを進めることを社是に掲げている。25歳以上を視聴対象に,ニュースや硬派番組を中心に編成し,子ども番組やスポーツなどは一切放送しない。ただOTRは,公共放送をうたっているものの,財源(年間15億ルーブル,約50億円)はほぼすべて政府交付金であるうえ,会長と役員の任命権は大統領が握っていることから,政府の影響を排除できるのか疑問視する声も上がっている。