放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

台湾NCC,「メディア独占禁止法」の草案公表

台湾の独立規制機関である国家通信放送委員会(NCC)は2月20日,放送局同士の合併や,新聞社による放送局買収等のクロスメディア所有を具体的に規制する新法草案を公表した。草案によると,地上テレビ局同士の合併の場合,合併後の平均視聴率が5%を超えるケースは認めないとしている他,新聞とテレビ局の合併の場合は,合併後のテレビ局の視聴率が20%以上,またはそのニュースチャンネルの視聴率が15%以上になるケースは認めないなど,ケーブルテレビ事業者やチャンネル事業者の合併も含め具体的なシェア規制を実施する内容となっている。これに対し事業者などから「厳しすぎる」との不満が出ている一方,業界を監視しているメディアNGOからは視聴率について「各事業者が報告する数字でなく客観的な調査を行うべき」との要求が出されている。

中国SARFT,「贈り物の広告」を放送禁止に

中国の国家ラジオ映画テレビ総局(SARFT)は2月5日,視聴者に贈り物を勧めるような広告を放送しないよう,全国のテレビ局・ラジオ局に通知した。通知によると,最近の放送局の広告には,「贈り物ベスト商品」,「上司への贈り物」などとして,視聴者に対し高級時計や希少な切手,金貨などの贈り物を勧め,誤った価値観を広めて世相の悪化を助長するものがあるとして,各局に管理強化を要求している。中国では習近平政権の発足後,特に政府機関による豪華な飲食などの「浪費」への反対キャンペーンが始まっており,今回の通知は中国で普遍化している賄賂の横行を抑制するため,当局が放送局に対して範を示すよう求めたものである。

韓国,世論への影響力はテレビ,ネットの順

韓国政府の文化体育観光部は2月7日,世論に影響力を持つメディアについての調査で,テレビが1位,インターネットで提供されるニュースが2位になったとの結果を公表した。この調査は,テレビ,ラジオ,インターネット,新聞を対象に実施したもので,世論に最も大きな影響力を持つメディアはテレビ(ニュース・時事報道番組)が48.2%,インターネットニュースが26.0%,新聞が17.3%,ラジオが8.4%となった。インターネットニュースの世論への影響力を年齢別にみると,20代が42.4%で,テレビの42%を抜いたが,年齢が高くなるにつれ影響力は下がる傾向がみられた。また,テレビ事業者別にみた世論への影響力は,KBS系列が29.0%と最も高く,次いでMBC系列10.7%,SBS系列7.5%と,地上放送3社で半分近くを占めた。

インド,公共放送改革で政府委員会が発足

インドの情報放送省は,テレビ局ドゥールダルシャンとラジオ局AIRを傘下に持つ公共放送機関プラサール・バーラティー(インド放送協会)の役割や組織の見直しを検討するハイレベルの専門委員会を設置し,2月5日から本格的な議論を開始した。この委員会は,情報インフラや技術革新を担当する首相顧問のピトゥローダ氏が委員長を務め,ピトゥローダ委員会と呼ばれている。政府との関係をどう位置付け,公共放送としてどう組織を強化していくかを議論の中心に据え,財源のあり方や番組編成の改革,技術革新,デジタル化の促進,人材の確保など様々なテーマで検討が行われる。専門委員会立ち上げの背景には,2012年12月,放送の規制機関を兼ねるTRAI(電気通信規制庁)が情報放送省に対し,政府(連邦・州)による放送事業参入を禁じる勧告を再び出したことがある。インド放送協会には毎年多額の政府資金が投じられている。

ベトナム,2020年までに段階的地デジ移行

ベトナムの情報通信省は1月末,グエン・タン・ズン首相が地上テレビ放送のデジタル移行を2020年12月末までに完了する計画を了承したと発表した。発表によると,デジタル放送の規格としてはDVB-T2が採用されており,移行は4段階で行われ,第1段階として2015年末までにハノイ,ホーチミン,ハイフォンなど中央政府直轄の5都市でデジタル放送に完全移行する。政府は200万近いとされる貧困世帯に対し必要な機器の購入への補助を行うとしている。ベトナムでは2000年代初頭から既にハノイやビンズン省,ホーチミンなど一部地域で,地上デジタルテレビ放送が始まっている。