放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

台湾,香港系の大手メディアを実業家が買収

台湾で「りんご日報」や「壹テレビ」などを経営する香港系の大手メディアグループ「壹傳媒」が,台湾の5人の実業家に買収されることが決まり,11月28日にマカオで調印式が行われた。壹傳媒は当初,中国信託金融持ち株会社の辜仲諒元副会長が中心になり買収するとされていたが,行政院(内閣)の金融監督管理委員会が,金融事業関係者の企業株所有を20%以下に制限する方針を示したのを受け,辜氏が一部の株式の引受先を探していた。その結果,既に中国時報グループを所有する旺旺の蔡衍明オーナーの長男をはじめ,合わせて5人の実業家が共同で買収することになった。しかし,これまで政府や企業の不祥事暴露で評価のあった壹傳媒が実業家に買収されることに対しては,報道の自由の後退との批判が非常に強く,今後の動向は不透明な面も残っている。

香港,新規地上テレビ局認可要求の声拡大

香港では,3年近く前に3社が申請した地上テレビ局の新規免許について,認可を求める世論が高まりを見せている。11月上旬に香港大学が行った世論調査では,市民の85%が新規テレビ局認可に賛成した。また既存の地上テレビ局ATVが11月11日,新規地上テレビ局の認可に反対する街頭行動を実施した際,オーナーの王征氏が400人近くの社員を動員した上で自ら参加し,ダンスを踊るなどした様子を自局で中継した。これに対し規制機関の通信事務管理局には「公器乱用」として視聴者からの苦情が殺到,認可を求める世論が一層高まっている。

韓国,首都圏12万世帯が地デジ化未対応

韓国の放送通信委員会(KCC)は11月13日,地上アナログ放送の終了(2012年12月31日)を控え,全国1,734万世帯のうち99.2%がアンテナ直接受信や有料放送への加入を通じて,地上デジタル放送を視聴するまでになったことを明らかにした。一方で,首都圏826万世帯の1.5%にあたる約12万世帯は,いまだにデジタル化への準備が終わっていないことも判明した。これに関連して,キム・ヨンスKCCデジタル放送推進団長は「首都圏でもデジタル化への対応が進むよう精一杯の努力をする」と述べており,KCC では,地上アナログ放送終了までにデジタル放送受信機器を準備できなかった世帯のために,政府支援を2013年3月まで延長するとしている。

韓国,「2012年放送評価」でKBS1が今年もトップに

放送番組の質の向上のため,韓国の放送通信委員会(KCC)が毎年放送事業者を対象に行っている放送評価で,前年に続いて公共放送のメインチャンネルKBS1が地上放送3社の主要4チャンネル中,最も高い評価を受けた。この放送評価は,番組の質の評価や放送審議規定遵守状況などの「放送内容」,災害放送や子ども・障害者向け番組の比率などの「編成」,財務の健全性などの「運営」の3つの分野についてKCCが審査するものである。2012年11月20日にKCCが公表した,2011年の1年間を対象にした番組評価では,KBS1は,番組の質の評価,放送審議規定遵守,災害放送などの項目で他のチャンネルよりも高い評価を受け,900点満点で755.44点を獲得して1位となり,以下KBS2,SBS,MBCの順となった。

インド,公共放送が視聴率調査会社を提訴

テレビ局Doordarshanなどを傘下に持つ公共放送機関のインド放送協会(Prasar Bharati)は11月16日,インドで唯一の視聴率調査会社TAMメディア・リサーチ社を,独占的な立場を乱用して公正を欠いた視聴率調査を行っているとして,市場の公正な競争を監督する行政機関CCI(Competition Commission of India)に提訴した。TAMは人口10万以上の都市のテレビ所有者を対象に視聴率調査を行っており,公共放送が強いプレゼンスを持つ小都市や農村地域の視聴データが調査結果に反映されない仕組みになっている。しかし,インド放送協会は財源として広告収入に大きく依存していることから,今回の提訴となった。TAMに対しては,大手衛星テレビネットワークNDTVが2012年7月,視聴率調査の不正操作で大きな損害を被ったとして裁判所に提訴している。