放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

韓国,衛星DMBサービス終了

韓国の放送・通信を所管する放送通信委員会(KCC)は7月5日,衛星DMBサービスの唯一の事業者「SKテルリンク」からの事業廃止申請を受理し,8月31日でサービスを終了すると発表した。衛星からの電波を携帯電話で受信し,移動中にテレビを視聴できる衛星DMBは,2005年5月に有料サービスを開始し,一時は加入者が205万人まで増えた。しかし,地上テレビ大手3社などがその後スタートさせた無料サービスの地上DMBに押され,最近では加入者が3万9,000人にまで落ち込み,SKテルリンクは2011年,衛星DMB事業で3,300億ウォン(220億円)の赤字を計上していた。

台湾,NCCの新委員4人を立法院が承認

台湾の立法院(国会)は7月26日,独立規制機関である国家通信放送委員会(NCC)の7人の委員のうち,任期切れのメンバーに代わる4人の新委員を与党の賛成多数で承認した。今回,行政院(内閣)が選出した4人の新委員は,履歴書の偽造や論文の盗用といった疑惑が続出したほか,二重国籍や利益相反の問題も指摘されたことから,民進党など野党は一致して任命に反対した。これに対し4人の新委員は国民党の会合に出席し議員に支持を求めるなどした結果,国民党内部からの反対票も出たものの,僅差で過半数の承認を得た。しかし「政治からの独立」を標榜して作られたNCCの委員が与党議員に「借り」を作ったことで,今後その運営に政治的圧力がかかることは避けられないとの見方が強い。

中国,ネット動画への規制強化へ

中国の国家ラジオ映画テレビ総局(SARFT)は7月9日,インターネットで提供されるドラマや短編映画などについて,事前に当局の承認を得るよう求める新たな通達を発表した。それによると通達の目的は,「低俗で暴力的なコンテンツ」を制限し,ネット番組の健全な環境を作ることとされ,当局の承認がないまま動画を提供した場合は罰則を科すとしている。中国のネット動画は,大手動画サイトがコンテンツの独自制作を始めてから大きく変化し,特にネットのみで提供される「ミニ映画」が爆発的な人気を博している。今回の措置を受けて,「優酷」や「新浪」などネット動画サイト大手が加盟する業界団体は13日,コンテンツの事前審査制度を実行することを表明した。

香港,地上局でもロンドン五輪中継実施へ

香港の大手ケーブルテレビ事業者i-Cableは7月17日,自身が保有するロンドン五輪の放送権のうち開幕式や閉幕式を含む一部について,地上テレビ局のTVBとATVに有償で譲渡することで両局と合意した。i-Cableはもともとロンドン五輪までに地上テレビ局の免許を取得する前提で放送権を獲得したが,香港政府の許可が免許申請から2年近くたっても出ていない中で,五輪の組織委員会から地上局での放送を認めるよう要求を受けていた。TVBやATVとの交渉は5月末にいったん決裂したが,香港政府の仲介もあり,五輪開催の直前になってようやく合意が成立した。

インド,放送事業者がCATVのデジタル移行延期に抗議

放送事業者のStar IndiaやZee News,それに事業者団体のインド放送財団(Indian Broadcasting Foundation)は7月17日,インド政府がデリーなど4大都市圏のケーブルテレビのデジタル移行を6月末の実施直前に4か月延期したことに抗議し,更なる先延ばしがないよう求める請願書をデリー高裁に提出した。高裁は政府と情報放送省に対し,8月6日までに回答を示すよう通知した。ケーブルテレビのデジタル移行が先送りされた背景には,移行に必要なセットトップボックスの普及の遅れに加え,ケーブルテレビ事業者(LCO)やマルチシステム・オペレーター(MSO),それに一部の州政府からの圧力があるとされている。

UAE,Al-Sharqiyaがドラマチャンネル開設

アラブ首長国連邦のドバイを拠点とするアラブ地域向けの衛星放送局Al-Sharqiyaは7月20日,24時間ドラマチャンネルAl-Sharqiya Dramaを開設した。これで同局のチャンネルは総合娯楽チャンネルAl-Sharqiya TVとニュース専門チャンネルAl-Sharqiya Newsと合わせ3チャンネルとなった。