放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

韓国,KBSの長期ストが3か月で終了

韓国KBSと同局の第2労組(全国言論労組KBS本部)は6月7日,「公正な放送」の実現に向けて労使が合意したことを受け,3月以来の94日間に及ぶストライキを解除すると発表,翌日8日午前5時から正常業務に復帰した。今回,労使間で合意された事項は,労組が放送正常化のためにストライキを中止して業務に復帰すること,2012年の大統領選挙などで公正な放送を実現するため具体策を用意すること,労使は相互信頼と意思疎通により公共放送にふさわしい組織文化の形成に努力すること,ラジオ活性化のために努力することの4点である。また,KBSはストライキによって視聴者に迷惑をかけたことを深く陳謝した。一方,MBCやYTNなど他社は,現在も長期ストを継続している。

中国,放送・映画産業の高成長継続

中国の放送・映画産業の2011年の売り上げは2,894億元(約3兆6,200億円)と前年より17.7%伸び,高成長が続いていることが分かった。これは国家ラジオ映画テレビ総局(SARFT)が6月28日に発表したもので,それによると業界全体の広告収入は1,123億元(約1兆4,000億円)と前年より19%増加した。またケーブルテレビ事業の売り上げは564億元(約7,050億円)と前年より16%増加,映画の興行収入は131億元(約1,640億円)と過去9年間続けて年率30%の伸びを維持した。

中国,CCTVドラマに「文革美化」と批判

中国中央テレビ(CCTV)で5月から始まった連続ドラマ『知青』について,文化大革命の時代を肯定的に描いているとの批判がネット上で噴出し,議論を呼んでいる。『知青』は,1960~70年代の文化大革命の時期に,農村に「下放」された知識青年の境遇を描いたもので,計50話のシリーズとしてゴールデンタイムにCCTVで放送されている。このドラマについてネット上では,「現実はドラマのようにロマンのあるものでなく,辛い記憶しか残っていない」,「文革時代の知識青年の生活はひどいもので,精神異常をきたした人も自殺した人もいた」などとする批判が噴出している。中国では文化大革命そのものを議論することは長年タブーとされ,その実態を知らない若者が多いだけに,今回のドラマを“歴史の歪曲”と受け取る年長者が多かったものと見られている。

インド,CATVのデジタル移行を延期

インドの情報放送省は6月20日,それまで6月末としてきた4大都市圏(デリー,ムンバイ,コルカタ,チェンナイ)のケーブルテレビのデジタル移行を4か月先送りする決定を明らかにした。その背景には,ケーブルテレビのデジタル化に必要なセットトップボックス(STB)の普及が,4大都市圏でも2~3割しか進んでいないことがある。政府は全国のケーブルテレビのデジタル化を4段階で進め,2014年12月末に完了するとしてきたが,その第1段階で早くも躓いた形となった。今回の決定には,より早期のデジタル移行を主張してきたTRAI(電気通信規制庁)や放送事業者の団体が強い失望を表明した一方,ケーブルテレビ事業者の団体は歓迎を表明した。

米ニューズ・コープ社が豪の有料テレビ事業強化へ買収提案

ルパート・マードック氏が率いる米メディア企業大手ニューズ・コープは6月20日,オーストラリアのカジノやテレビ局に出資している持ち株会社CMH(Consolidated Media Holdings)を,約20億豪ドル(約1,600億円)で買収する計画を提案した。計画が実現すると,豪有料衛星テレビ最大手Foxtelの株式のうち,現在CMHが所有する25%がニューズ・コープに渡り,ニューズ・コープの持ち株比率が50%に上がる。また,衛星テレビやIPTVの有料スポーツ専門チャンネルFox Sports Australiaの株式も,計画実現後は100%ニューズ・コープの所有となる。CMHの筆頭株主ジェームズ・パッカー氏はこの申し出を歓迎しており,今後はACCC(競争消費者委員会)による審査と認可を待つこととなる。一方,ニューズ・コープのオーストラリア事業を担うNews Ltd.は同日,新聞・出版事業の人員削減と編集部門の統廃合の方針も発表しており,ニューズ・コープはオーストラリアにおけるメディア事業の重点を新聞・出版から放送に移しつつある。