放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英政府,新たな国内映像産業振興策を導入

イギリス政府は3月21日,国内のアニメやビデオゲーム,テレビ番組の産業振興策として,2013年4月から優遇税制措置を取ることを発表した。イギリスの映像産業の年間売上げのなかで,アニメは1億200万ポンド(約130億円),テレビゲームは2億8,000万ポンド(約360億円),テレビ番組は111億ポンド(約1兆4,000億円)をあげている。政府は,業界への税控除によって,制作現場の国外移転に歯止めをかけ,外国企業のイギリス国内制作誘致が可能と期待している。

英BBC,報道要員140人削減を発表

イギリスの公共放送BBCは3月27日,新経営計画に沿ったリストラの一環として,2013年までに報道部門の要員を140人削減することを発表した。報道部門には2017年までに7,000万ポンドの経費削減が割り当てられており,こうした要員削減のほかに,キャスター数の削減やテレビとラジオの番組制作上の連携などが行われる。なお,140人を削減する一方,新体制で必要なポストとして11人分が補充される。

仏CSA,地デジ新規6チャンネル選定

2011年12月から地上テレビの放送方式が全土でデジタルに切り替わったフランスでは,CSA(視聴覚高等評議会)が3月27日,新たに6つの地上デジタルチャンネルを選定したと発表した。HD(高画質)の無料チャンネルであることが条件の今回の公募に対しては33件の申し込みがあり,CSAは3月5日から10日間にわたって,事業者に対するヒアリングを行った。その結果,既存の商業放送大手TF1 が「フィクション」,M6が「家庭」で選ばれ,このほか新興事業者などの「スポーツニュース」「ドキュメンタリー」「女性」「多様性」のいずれも専門チャンネルが選ばれた。CSAは「チャンネルの永続性を保証する経済的基盤の堅固さなどに基づいて選定した」としている。新チャンネルには6月末に免許が交付され,2012年末に放送開始の予定である。

仏INA,アーカイブをYouTubeに貸出

フランスの日刊紙フィガロは3月26日,膨大な視聴覚アーカイブを蓄積しているINA(国立視聴覚研究所)が,インターネットによる動画配信事業者YouTubeに対して,5万7,000本のビデオを貸し出すことで合意したと伝えた。これらのビデオはYouTubeの文化,歴史,スポーツ,娯楽の専門チャンネルで配信され,その広告収入はINAと折半されるという。フランスの公共放送機関の1つであるINAのガレ会長は「INAのコンテンツが多様なインターネット利用者に知られ,INAのサイトへもアクセスが増えることを期待している」と話している。INAはYouTubeがINAのコンテンツを不法に流用しているとして,2010年に裁判所に提訴しているが,この合意によって裁判も和解となる見通しだ。

独公共放送ZDF,会長交代

ドイツの公共放送ZDFのマルクス・シェヒター会長(62歳)が3月14日に退任した。シェヒター氏は第4 代会長として2002 年から2 期10年を務め,特にZDFのインターネットサービスやデジタルチャンネルの発展に尽力した。再選も可能だったが,2011年1月には2 期をもって退任する意向を表明していた。新会長には,これまでZDF編成局長を務めていたトーマス・ベルート氏(57歳)が就任した。ベルート新会長は就任所信表明で,特にZDFのメインチャンネルを若い世代にも見てもらえるよう番組編成改革を行っていく,とした。

伊RAI,6年ぶりに黒字決算の見込み

イタリア公共放送RAIの経営委員会は,3月28日,2011年の決算案を承認し,2011年は410万ユーロ(約4億5,000万円)の黒字決算が見込まれることを明らかにした。RAIは2006年以降赤字決算が続き,黒字回復は6年ぶりとなった。RAIは,受信料を補完する広告収入が年々低下するなか,2011年後半には,北米総局など海外支局の大幅な縮小を含む総額6,000万ユーロ(約66億円)の財政削減策を断行した。RAIのレイ会長は,組織内の部門別・媒体別の各報道部門の一元化など効率化を進める一方,報道体制拡充計画に今後3年間で4億9,500万ユーロ(約550億円)を投資予定だと述べた。