放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

韓国,KCC新委員長が内定

韓国のイ・ミョンバク(李明博)大統領は2月14日,側近の不正疑惑で1月に辞任したチェ・シジュン(崔時仲)前放送通信委員会(KCC)委員長の後任として,イ・ゲチョル(李啓徹)元情報通信部次官(72)を内定した。イ氏は高麗大学法学部を卒業後,1967年に旧逓信部に入り,電波管理局長,企画管理室長などを歴任してきた。

韓国,障害者向け放送義務化

韓国放送通信委員会(KCC)は1月30日,字幕や手話,音声による画面解説など,障害者向け放送提供の義務化を明らかにした。これにより,字幕放送については全放送番組の100%,また画面解説放送は10%,手話放送は5%をそれぞれ編成することが義務付けられた。実施の時期については,KBS,MBC,SBS,EBSなどの地上放送局は2013年までに,その他の地域の地上放送局は2015年までに,また,ケーブルテレビの報道および総合編成チャンネル使用事業者は2016年までに完了することとされている。

台湾,メディアオーナーの“放言”に反響

台湾の中国テレビや中天テレビなどを傘下に持つ中国時報グループのオーナーが,アメリカの新聞に「天安門事件での虐殺は事実ではない」などと述べたとして,台湾のメディア学者から強い抗議の声が上がっている。この発言は,経営が悪化した中国時報グループを3年前に買収した食品会社「旺旺グループ」の蔡衍明会長が,1月20日付けのワシントン・ポスト紙のインタビューで述べたもので,この他「中国は多くの点でとても民主的」などとも述べている。旺旺グループは中国で多額の利益を上げるビジネスをしていることから,台湾のメディア学者60人余りが2月6日,「公器の私物化に反対する」として,グループの旗艦メディアである中国時報に対する寄稿を行わない「拒絶中時」運動を進めると表明した。

インド,公共放送に新たな会長が就任

公共放送機関,インド放送協会の傘下にあるテレビ局ドゥールダルシャンとラジオ局AIRの会長(最高経営責任者)に,文化省次官だったジャウハル・スィルカール(Jawhar Sircar)氏が,2月22日,就任した。同ポストは前任者のB.S.ラッリ(B.S.Lalli)氏が数々の不正疑惑で2010年12月に職務停止処分を受けた後,情報放送省の審議官クラスの人物が代行を務めていた。新会長にとって,ドゥールダルシャンとAIRの滞っている人事の解決と両放送局の番組の質の向上が急務とされている。

豪,多様なテレビ視聴環境下で視聴時間増加

オーストラリアでは,デジタル化による多様なテレビ視聴が可能になる中で,テレビの視聴時間が増えているとの調査結果が出た。これは視聴率調査会社Nielsen,OzTAM,RegionalTAMの3社が,オーストラリア初のマルチスクリーン視聴に関する調査に基づき,2月20日に合同で発表したものである。それによると,オーストラリアでは現在約95%の世帯が地上デジタル放送の受信機器を最低1つ保有し,約45%の世帯がタイムシフト視聴可能な環境にある。そこで,インターネット映像配信サービスの利用状況や,スマートフォンやタブレットといった可搬デバイスでの視聴時間など,新たなデータを加えて調べた。その結果,2011年10~12月における家庭でのテレビ視聴時間は113時間38分/月と,前年同期と比べ約6時間半(6.1%)増え,テレビ番組を含む録画映像の視聴時間は12時間/月と,約4時間半(60%)増えたことが明らかになった。

中東,クルド語の新テレビチャンネル誕生

2009年から試験放送に入っていたクルド語衛星テレビの新チャンネルSterk TVの本放送が,2月6日,始まった。クルド語は,自らの国を持たない世界最大の民族といわれるクルド人の言語で,トルコ,イラク,イラン,シリアの国境地帯で広く使われるほか,欧州各国にも話す人がいて,方言も多い。同テレビでは話す人が多いクルマンジー,ソラニーの両方言が主に使われ,トルコ語番組も放送されている。クルド語のテレビチャンネルは,トルコ国営TRTのChannel6やイラクのGari Kurdistan TVなどをはじめ,欧州にもいくつかチャンネルがある。