放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

中国,地方テレビ局の人気番組を制作禁止に

中国の国家ラジオ映画テレビ総局(SARFT)は9月17日,湖南テレビが全国向け衛星チャンネルで放送している人気番組『快楽女声』の制作禁止処分を通告した。『快楽女声』は湖南テレビが2005年に大ヒットさせた『超級女声』の後継番組で,公募した一般の女性の中から歌や踊りのコンテストで勝ち抜いた人がスターとしてデビューできることが売り物となっている。SARFTは以前からこうした番組は若者の射幸心をあおるなどと批判的で,放送時間を90分以内に制限していたが,『快楽女声』のシリーズ最終回では,規制時間を大幅に超過して番組を放送したとして処分を行った。しかし,今回の処分は,SARFTに多額の上納金を納めている中国中央テレビ(CCTV)にとって,手ごわい競争相手である湖南テレビに打撃を与えるためとの見方が,業界関係者の間では強い。

台湾,地上テレビ5つの新規免許交付の方針を発表

台湾の国家通信放送委員会(NCC)は9月21日,現在の地上テレビ局5局以外の事業者に,5つの地上テレビ新規免許を交付する方針を決めた。5つの免許のうち1つは「公益チャンネル」として,主に民間の出資によるものの,芸術・教育文化・環境・健康などの番組の放送を義務付けることにしている。免許交付にあたっては,公益チャンネルは審査制,その他の商業チャンネルは審査と競売の組み合わせで行うとされ,いずれもHD化とデジタル化が義務付けられ,HD1チャンネルと標準画質1チャンネルでの放送となる。これによって台湾の地上テレビチャンネル数は現在の16チャンネルから将来26チャンネルにまで増加する。

韓国,人気司会者がスキャンダルで引退

韓国のバラエティー番組などで「国民的司会者」として絶大な人気を誇るタレントのカン・ホドン氏が9月9日,脱税の罪に問われた責任を取って「暫定的に引退する」と宣言した。韓国の国税庁は9月5日,カン氏に脱税による追徴金を課したことを明らかにしたばかりで,韓国での報道では追徴金は数億ウォン(数千万円)とされている。地上放送3 社全ての看板バラエティー番組に出演しているカン氏が,脱税スキャンダルによって「暫定的」とはいえ引退宣言をしたことで,放送各社は代役探しに頭を痛めている。

韓国,社会的弱者へのデジタル化支援は「不十分」と指摘

韓国の創造韓国党のイ・ヨンギョン(李容璟)国会議員は9月20日,「社会的弱者」に対するデジタル化支援が不十分だとして,政府に支援策の見直しを求めた。韓国政府は,2012年12月末のアナログ放送終了に向けて,生活保護を受けている人や視聴覚障害などを持つ人などの社会的弱者がデジタル放送を見られるよう,財政的援助などの支援策を用意している。しかしイ議員が入手した国政監査資料によると,社会的弱者とされる全国168万世帯のうち,政府の支援を受けた世帯は1万2,970世帯(同月13日までの数値)で,全世帯の約0.8%程度に過ぎないという。

カタール,アルジャジーラの社長が交代

衛星テレビ「アルジャジーラ」のワダフ・ハンファル(Wadah Khanfar)社長が9月20日,突然辞任した。同氏は8年間,社長としてアルジャジーラを世界的なニュースチャンネルに育てたが,突然の辞任劇の背景には,米国の圧力を受け同社長がイラク戦争の報道に手心を加えていたとする告発サイトWikiLeaksの暴露があったとの見方もある。またアルジャジーラは,「アラブの春」と呼ばれる中東各国の民主化運動の報道で,隣国バーレーンに対しチュニジア,エジプトなどとは違う姿勢で臨んでいるとの批判も受けていた。

サウジアラビア,新国際ニュースch計画を発表

世界有数の資産家として知られるサウジアラビア王家のアルワリード・ビン・タラル(Alwaleed bin Talal)殿下が9月13日,アラビア語の新たな24時間国際ニュースチャンネル「アルアラブ(Alarab)」の放送を来年12月に開始すると発表した。アルアラブは,サウジアラビアの著名なジャーナリストのジャマル・カショーギ(Jamal A Khashoggi)氏が運営し,殿下が会長を務める持ち株会社などからは独立した事業になるという。