放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

韓国,KBSのドラマが女優の「スト」で放送不能に

KBS2の人気ドラマ「スパイ・ミョンウォル」の8月15日放送分が,主演女優の「スト」により放送できないという,韓国ドラマ史上初めての事態となった。KBSや制作会社によると,撮影スケジュールなどをめぐって,ドラマの演出者と主演女優ハン・イェスル氏の間で13日に現場で激しい言い争いが起き,女優は演出者の交替を求めて撮影を拒否,そのまま実家があるとされるアメリカに向かった。このため14日と15日の撮影ができず,KBS2では急遽,これまでのハイライトシーンを集めた特別版を作り15日に放送した。女優は結局17日に帰国し,制作スタッフに謝罪して事態は収まったが,韓国のドラマ制作が事実上「生放送」に近い状況で行われている実態が露呈した。女優に対する非難の声がある一方で,撮影現場で細切れの台本を出演者に渡し,全体の流れも把握できない中で,夜通し撮影を強いる韓国の放送業界の責任を問う声も出ている。

韓国,視覚障害者のテレビキャスター誕生

KBSは地上テレビ局で初の視覚障害者のキャスターとして,イ・チャンフン氏(25)を起用,7月25日に委嘱式を行った。イ氏は生後7か月で視力を失ったが,野球中継などを聞いて放送に興味を持ち, 2007年から視覚障害者向けのインターネット放送の司会者を経験してきた。そしてKBSによる障害者を対象としたキャスター採用試験に応募し,523倍の競争を勝ち抜いた。イ氏は,3か月間の実務教育を受けた後,契約キャスターとして活動する予定で,KBSでは点字プリンターや補助職員を配置するなど支援体制を整えた上で,ニュース番組の一部のコーナーを任せる方針である。

香港記者,中国要人への「取材権」要求

香港記者協会と香港撮影記者協会は8月20日,先に香港を訪問した中国の李克強副首相への要人警護が取材権を侵害する過度なものだったとして,300人が参加し香港政府への抗議デモを行った。両協会によると,李副首相が8月16日から3日間香港を訪問した際,メディアが取材できる行事の数が以前の中国要人の香港訪問と比べ減少し,多くの場合,香港政府広報局の発表や新華社の原稿を待つしかなかったという。しかも取材の際,警護に当たる警官が撮影を阻止したり所持品を調べたりしたということで,デモ隊は警察に対し取材権の保障と陳謝を要求した。

台湾,ケーブルテレビ間の競争推進へ

台湾の独立規制機関である国家通信放送委員会(NCC)は8月17日,委員会議を開き,ケーブルテレビ事業者のカバーエリアを拡大することで,各地区で2社以上の事業者を確保する改革案をまとめた。台湾では現在,全土を51の地区に分けてケーブルテレビの運営にあたっているが,このうち39地区では1地区に1社しか事業者が存在せず,事実上の独占によってユーザーの利益が侵害されているとの批判が出ていた。このためNCCでは,51の地区を23に統合し,新規参入も含め各地区に2社以上の事業者を確保することで,競争推進とデジタル化の進展を図ることにした。

リビア,反体制派が首都の国営放送局制圧

カダフィ政権打倒を目指すリビアの反政府勢力は8月22日,首都トリポリで,それまでカダフィ大佐の演説などを放送していた国営テレビ局を占拠,国営ラジオ局も掌握した。そして8月25日,国営テレビ局の衛星チャンネルを使った新たなラジオ局Radio LibyaのFMと中波による放送を開始した。

カタール,AJEがニューヨークで放送開始

カタールの衛星テレビ局アルジャジーラの英語放送AJE(Al-Jazeera English)が8月1日,ニューヨークでケーブルテレビによる放送を開始した。AJEはCNNやBBCに対抗する国際ニュースチャンネルとして5年前に放送を開始したが,アメリカのケーブルテレビ市場参入は難しく,これまでワシントンDCやヒューストンなど一部地域に限られていた。今回,「9・11」の現場となったニューヨークでも放送が可能となった背景には,北アフリカや中東の一連の政変を伝えるAJEの報道への高い評価があるといわれている。