放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

米アップル,iPadの販売開始

米アップル社は4月3日,タブレット型の携帯端末「iPad」を発売した。これに伴って放送局,新聞社,出版社などメディア各社が競ってiPad用アプリを発表し話題となっている。放送局では,ABCネットワークが同局の番組を広告付きで無料視聴できる「ABCプレーヤー」などのアプリを発表したほか,CBSも人気番組『サバイバー』をiPad発売と当時に無料視聴できるようにした。このほかニューヨークタイムズ,USAトゥデイ,タイム誌,ロイターなどの各社もアプリを発表しており,iPadには大きな期待がかけられている。

屋内外ビデオ広告の市場拡大-米調査

米ニールセン社は4月12日,屋内外のビデオ広告の接触者に関するレポートを発表,これによると2009年後半の4か月間に,全米で2億3,700万人が設置型の屋内外ビデオ広告に接触したと推計される。この調査は,映画館やバー,レストランなどに設置されたスクリーンを用いるビデオネットワーク型広告を対象としたもので,月間の接触者が最も多かったのは映画館で,以下,エレベーター,スポーツクラブ,バーなどのビデオネットワークが上位にランクインしている。関係者の間ではすでに3スクリーンから,屋内外のビデオ広告を含めた4 スクリーン時代へ入ったという認識が一般化し始めている。

NABショー開催,3Dに注目集まる

全米放送事業者協会(NAB)の見本市「NABショー」が4月10日から15日までラスベガスで開催され,多くの企業が3Dに関する機器を出品したほか,FCC(連邦通信委員会)が発表した「全米ブロードバンド計画」に関連して,地上テレビ局が帯域保持の問題などについて議論をかわした。

今年の大会は,オープニング映像が3Dで上映されたのをはじめ,ソニーなど大手企業の大半が3D カメラやモニター,編集用スイッチャーなどの機器を競って展示し,参加者の注目を集めた。映画「アバター」の大ヒットでハリウッドや家電業界の3Dへの期待は高いが,地上放送事業者が実際の放送に3D技術をどう取り入れていくかについては,健康面での課題も指摘されていることから慎重になる放送局も多い。メーカーもこうした懸念に配慮して,すでに市場で3Dテレビを販売している韓国のサムスン電子は,体調への影響やその対処法などについて会場で紹介した。

一方,放送用の周波数を競売にかけることなどを盛り込んだ全米ブロードバンド計画をFCCが議会に提出したことから,放送業界は政府からアナログ停波で使われなくなった周波数帯の返還を求められる可能性があるとして危機感をつのらせている。会場で講演を行ったFCCのジェナコウスキー委員長は,強制的な手段には至らないだろうとの考えを示したが,放送局関係者からは今後の推移を注意深く見守る必要があるという意見が出されていた。

米動画サイトHulu,一部有料化へ

米ロサンゼルスタイム(4月21日)などの報道によると,ディズニー,ニューズ・コープ,NBC ユニバーサルが出資するオンデマンド動画サイトであるHuluが,番組視聴の一部有料化を検討している。これによると,シリーズ番組で一番最近放送されたエピソード5本分までは無料で提供されるが,それ以前のものは有料化するという。このサービスは「Hulu+」と名付けられ,早ければ5月中にも導入することが検討されているという。

WSJ,ニューヨーク版を発行

アメリカ最大の経済紙ウォールストリート・ジャーナルが4月26日から,ニューヨーク版の発行を始め た。同版は別刷りで,市政や犯罪,教育などニューヨークに特化したニュースを週6日発行する。WSJ を発行するダウ・ジョーンズ社は,2007年にルパート・マードック氏が率いるニューズ・コープに買収さ れ,その後,経済に加えて一般ニュースにも力を入れている。新聞だけでなく,放送や映画事業も行 う複合メディア企業のニューズ社が,厳しい経営の続くNYタイムズの本拠地に乗り込んだことで,縮 小が続く新聞市場での2大紙のシェア争いが注目される。