放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英IFNCプロジェクト,各地でヒヤリング開催

イギリス政府は,商業テレビITVの経営悪化に伴うローカルニュースの供給減少に対し,公的資金の投入を前提としたIFNC(Independently Funded News Consortia)計画を進め,2010年内に試験的なサービスを開始する予定である。この計画に沿って,サービス供給者として名乗りを上げた8事業者による事業計画の公聴会を,2月3日ウェールズ地域のカーディフ,5日イングランド地域のニューキャッスル,8日スコットランド地域のグラスゴーの3地域で開催した。政府は,各事業者との個別ヒヤリングも同時に進め,3月下旬までに事業者の絞り込みを行う。

英BBC Trust,会館建設事業監査報告書を発表

イギリスの公共放送BBCを監督するBBC Trustは2月25日, 会計検査院(NAO:National Audit Office)に委託した放送会館建設監査報告書を公表した。監査対象は,ロンドン中心部にある放送会館の大規模改修,イングランドの第2放送センター建設,スコットランド地域拠点にすでに完成したPacific Quayの3つのプロジェクトで,総額20億ポンド(2,800億円,£1=¥140換算)の建設費が見込まれている。ロンドンの放送会館建設は当初計画よりも完成が4年遅れ,建設経費も計画より100億ポンド以上の超過が見込まれている。NAO報告書は,この放送会館をめぐる失敗を教訓とし,より一層の経費管理の改善が求められると勧告した。

独公共放送,衛星でHDTV本放送開始

ドイツの公共放送ARDとZDFは,バンクーバー冬季オリンピックの開催に合わせて2月12日,総合編成チャンネル「das Erste」(第1テレビ)と「ZDF」(第2ドイツテレビ)の衛星HD放送をそれぞれ開始した。放送方式はともに720p/50を採用。従来の標準精細度(SD)放送も並行して続ける。HD制作は,当面は,オリンピック中継のほか,サッカー番組,人気ドラマ,映画,特集番組など一部だけで,他の番組はアップコンバートして放送するが,今後徐々にHD制作の割合を増やしていく予定。HD制作への完全移行およびSD放送終了の時期は未定である。また,各地の大手ケーブルテレビ事業者やドイツテレコムなどIPTV事業者もHD再送信を開始した。

独受信料徴収機関,オンライン・フォーラムを設置

ドイツの公共放送が共同で設立する受信料徴収センター(GEZ)は,従来から受信料関連の届け出等の事務をオンラインで行ってきたが,2月2日,視聴者と受信料について対話するためのインターネットサイトを新たに設けた。視聴者からの投稿は匿名可で,意見交換のフォーラムや,GEZの職員が質問に答えるチャット,職員のブログなどがある。受信料の支払い義務など制度面についてだけでなく,公共放送の番組編成についてなど多岐にわたる意見が寄せられ,フォーラムへの投稿は1日平均100件程度,開設1か月で3,000件に達した。

伊RAI,赤字で制作費削減へ

公共放送RAIの経営委員会は,1月28日,経費削減の一環として,2010年のドラマや映画への支出を700万ユーロ(8億6,100万円)削減する計画を承認した。これにより,1月中旬に見込んでいた2010年の損失予測1億5,500万ユーロ(約191億円)を,1億1,800万ユーロ(約145億円)に修正した。RAIのガリンベルティ経営委員長は,2010年はこれ以上の経費削減は不可能であり,不払い率で27~29%にのぼる受信料の不払い対策について,全員に払わせるような規則を政府が制定することが必要だと述べた。

伊Sky Italia,解約者増で加入契約が伸び悩み

衛星有料テレビSky Italiaの加入契約数が,2003年夏の営業開始から初めて減少に転じた。これは,今年2月発表の2009年第4四半期の決算報告で明らかになったもので,2009年末時点での契約数は478万に留まった。解約者が増えた原因としては,世界的な景気冷え込みによる家庭消費の落ち込みのなか,ベルルスコーニ政権が視聴料にかかる付加価値税(IVA)の税率を10%から2009年に20%へ一気に引き上げたことが大きいとみられる。これは衛星やインターネット経由の有料テレビサービスなどの比較的新しい業種に適用されていた軽減税率を廃止し,他のサービス業と同率にしたもの。