放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

韓国,KBS新社長に記者出身の大統領側近が就任

KBS理事会は11月19日,KBSの新社長に,KBS記者出身で韓国デジタルメディア産業協会(KoDiMA)会長のキム・インギュ(金仁圭)氏を選出し,イ・ミョンバク(李明博)大統領は23日,キム氏を新社長に任命した。キム氏は1973年にKBSに入社し,ワシントン特派員,政治部長,報道局長,ニューメディア本部長などを歴任,2008年10月からはデジタルメディア産業協会の初代会長としてIPTVの普及に尽力した。一方でキム氏は,前回の大統領選挙でイ・ミョンバク氏の言論特別補佐官を務めていたため,KBS労働組合は「大統領側近の社長就任と政権による放送掌握を阻止する」として,就任式当日の24日朝,約250人の組合員がキム氏の出勤を阻止する実力行使に出た。このためキム氏は午後に再度出勤を試み,激しくもみ合った末,ようやく社屋に入って就任式を行った。

中国,評判の連続ドラマが突然放送中止に

中国の地方テレビ局「北京テレビ」の連続ドラマ『蝸居』(小屋のような狭い家の意味)が突然放送中止となり,さまざまな憶測を呼んでいる。『蝸居』は流行作家による同名の小説をドラマ化したもので,中国における不動産価格の急激な上昇で住宅難に苦しむ市民の姿を描いている。広東省の新聞「南方都市報」によると,11月22日からドラマの放送が中止となり,北京テレビの関係者の話として,放送を管轄する国家ラジオ映画テレビ総局(SARFT)から放送中止を命じられたと伝えている。『蝸居』では,姉の住宅購入を手助けしようと,妹が汚職官僚と性的関係を持つ場面などもあり,上海で実際に摘発された汚職事件と内容が似ていることなどから,評判となっていた。

香港,i-Cableが英サッカー放送権を奪還

香港のケーブル事業者i-Cableは11月16日,イギリスのサッカー「プレミアリーグ」の2010年度から3年間分の放送権を獲得したことを明らかにした。プレミアリーグの放送権は3年前,IPTV事業者のNow TVがi-Cableから奪い取り,顧客数でi-Cableを追い抜く重要な要因となったが,今回i-Cableは放送権を奪還したことになる。i- Cableは放送権料について契約上秘密としているが,関係者は2 億ドル(約170億円)以上と見積もっている。これに対してNow TVは,スペインのサッカー「ラ・リーガ」の放送権を確保したほか,スポーツチャンネルのパッケージ料金の大幅な値下げを提示し,料金の値上げを打ち出したi-Cableに対抗している。こうしたサッカーの放送権をめぐる争いに対して視聴者からは,放送権を持つ事業者が頻繁に変わることへの不満が渦巻いている。

中東,アラブ系衛星がAl-Alamの伝送停止

11月4日,エジプトのナイルサットとサウジアラビアのアラブサットが,事前の通告なしにイランのアラビア語衛星チャンネルAl-Alamの伝送を停止した。この結果,アラブ地域の視聴者は同衛星チャンネルへ接触することが出来なくなった。アジア,北米,ヨーロッパをカバーする他の4つの衛星からの伝送は続けられている。消息筋の間では,Al-Alamの人気と中東地域におけるイランの影響力拡大への懸念,そしてイランと親西欧アラブ諸国間の緊張の高まりが背景にあるとの見方がある。

パキスタン,Geoの番組が再び伝送禁止

中東ドバイから伝送されているパキスタンの代表的な衛星ニュースチャンネルGeo Newsの番組「Mere Mutabiq」のスタジオからの放送が,11月23日,ドバイ政府により禁止された。同番組はDr.Shahid Masoodがアンカーを務める人気トーク番組。Geoはスタジオ外の場所から放送を続けている。Geo側はパキスタン政府の圧力によるものと非難,パキスタン政府高官はこれを否定している。Geoメディアグループがパキスタンのザルダリ大統領批判を強めていることで大統領側とGeoの対立が深まっていた。Geo Newsは,2007年末,先のムシャラフ政権末期にもドバイからの伝送を阻止されたことがある。

パキスタン,PBCが初の英語FM局開局

パキスタン放送協会(PBC)は11月14日,イスラマバードで,同協会初めての英語FM局Planet FM-94を開局した。