放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英BBC,2008年度年次報告書発表

BBCは7月14日,2008年度の事業・会計報告書を発表した。それによると,受信許可料収入の33億6,880万ポンド(約5,445億円)を含めた総収入は46億570万ポンドで,受信許可料を財源とする国内公共サービス事業に関する支出は33億9,600万ポンドだった。このうち,デジタルテレビ移行の支援について,弱者支援には2,440万ポンド,デジタル移行推進団体のDigital UKの運営に2,600万ポンド支出した。また,BBCの監督機関であるBBCトラスト会長のライオンズ卿は,報告書の発表と合わせ,批判の的となっている執行役員や幹部職員の賞与の支払いを当面延期することも明らかにした。

英BBCトラスト,ローカルサービスを承認

BBCの監督機関であるBBCトラストは7月31日,BBC執行部が提案する地域・ローカルにおけるテレビとラジオサービスの新計画について承認したと発表した。執行部はインターネットをベースにしたローカルビデオサービスを計画したが,これについてBBCトラストは公共的価値の審査を行った結果,競争を阻害するおそれがあるとし,09年2月に許可を与えなかった。今回の提案は,既存のテレビとラジオサービスを中核とした修正版で,地域・ローカルニュースや各地域における事実報道番組制作の拡充が含まれている。

仏地上デジタル,アナログ終了に向け政令公布

フィヨン仏首相は7月23日,昨年12月のデジタル移行全国計画を大幅に改正した新政令を公布した。これによりアルザス(2月2日)を初めとする2010 年の各地域のアナログ放送終了日が確定し,2011年に終了する地域も決定した。アナログ免許期間満了の関係でCanal Plusのみが先行して終了する期日も地域ごとに決定した。また受信料免除世帯への支援基金に加え,その他の低所得世帯や,70歳超の世帯,障害者世帯へも支援が行われる。一方,22日のデジタル戦略委員会の決定を受け,首相府は同じ22日,海外県・海外領土においても本土と同期日までにアナログ放送を終了すると発表した。

独,公共放送の受信料減収

ドイツの受信料徴収機関GEZは7月3日,2008年の徴収総額が前年を下回ったことを発表した。72億6,000万ユーロ(約9,801億円)で,2007年より3,800万ユーロ減少した。約0.5%の減で,徴収総額が前年を下回るのは初めて。受信料免除世帯の増加が主たる要因である。

独公共放送,DAB+プロジェクトの予算認められず

公共放送の財源需要審査委員会(KEF)は7月15日,公共放送のARDとドイチュラントラジオに対し,DAB+方式によるデジタルラジオ導入は現段階では成功の見こみがないとして,予定していた2009年から2012年までの予算4,200万ユーロ(約57億円)の使用を認めない判断を下した。判断の理由としてKEFは,大手商業ラジオが採算がとれないとして現時点での導入に否定的なこと,聴取者にとっての付加価値が不明確なこと,アナログ放送終了の見通しが立っていないことをあげている。各州政府は,遅れているラジオのデジタル化を2010年から再始動させる方針を固めていたが,けん引役となる公共放送が欠けることで,再び計画を見直さざるをえないことになった。

欧州委,「2001年放送通達」の改正を採択

EUの欧州委員会は7月2日,EU加盟各国の公共放送の任務定義と財源のありかたが,市場競争に悪影響を与えることを防ぐための指針,通称「2001年放送通達」の改正を採択した。旧通達は,各国において,公共サービス放送の明確な任務定義,適切な任務委託制度,過剰財源を防ぐしくみが必要だと定めている。新版は,この原則を踏襲しつつ,新しいメディア・経済環境に適合させるもの。具体的には,公共放送はインターネット配信など従来の放送概念には収まらないサービスも任務に含めてよいこと,新サービスを提供する場合は市場への影響を事前に審査すること,先端技術サービスのコストを受益者負担にする場合も公共サービスとしてよいこと,予算の最大10%の積立てをしてよいこと,などの規定が加わった。