放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英デジタルテレビ,89.6%に普及

イギリスの放送と通信を規制監督するOfcom(Office of Communications)は6月29日,2009年3月末のデジタルテレビ普及状況を発表し,過去3か月で0.7%増加し,全世帯の89.6%がデジタルテレビを利用していることを明らかにした。デジタル世帯の約40%にあたる1,020万世帯のメインテレビが無料のデジタル放送を受信しており,37.7%が地上デジタル放送を,2.0%が衛星放送をそれぞれ受信している。また,家庭にある2台目のテレビの61%がデジタル化した。

英Setanta Sport,高額放送権料負担で事業停止

アイルランドのスポーツ有料放送事業者SetantaSportは6月23日に,北アイルランドを除く英国内のサービスを停止した。Setanta は,2006年にイングランドのサッカー・プレミアリーグの放送権パッケージのうち2つを3億9,200万ポンド(約615億円)で獲得し,衛星放送 BSkyBの独占を崩し注目を集めた。これは,欧州委員会がプレミアリーグからBSkyBへの一括販売を競争法違反とみなして改善を求めた結果,リーグ側が放送権を6つのパッケージに分割販売したことによって可能となった。Setantaは,サッカー中継をキラーコンテンツとして,イギリス国内で地上デジタル放送やケーブルデジタルなどのプラットフォームで有料展開を行ったが,最終的にリーグへ支払う3,000万ポンド(約47億円)を調達できず,事業停止となった。

仏地上デジタル,無料チャンネルの衛星放送開始

衛星オペレーターのEutelsatは6月23日,AB3衛星からフランスの地上デジタル放送(TNT)の無料18チャンネルによるパッケージ FRANSATの放送を開始した。山岳地域などではAB3衛星からアナログ放送をパラボラ受信している世帯が多数あり,FRANSATのデコーダーとスマートカードを購入するだけでTNTの18チャンネルに加えてTF1HDなどHDTVの4チャンネルも無料で受信できる。Astra 衛星ではTNTチャンネルの放送はすでに実施されているが,仏政府のデジタル化推進計画である「フランスデジタル2012」ではアナログ放送終了に向け,100%の世帯をカバーするためには新たな衛星放送が必要と指摘していた。

独,RTLグループが衛星でHDTVチャンネル提供へ

ヨーロッパ最大の商業放送グループRTL Groupは6月5日,ドイツ向けのテレビチャンネルRTLTelevisionとVoxを,今年秋から衛星で,HDTVにより同時放送すると発表した。両チャンネルはともに娯楽中心の総合編成チャンネル。HDTVの放送方式は1080i,圧縮はMPEG4 AVC/H.264を使用,HD制作されていない番組は当面アップコンバートして放送する。またRTL Groupは,衛星事業者SES Astraが今回新たに提供するHDTVチャンネル用技術プラットフォーム「HD+」を利用し,HD信号送出,スクランブル化,スマートカード発行管理などの業務を一括してAstraに委託する。HDTVチャンネルの視聴に必要なスマートカードは,プリペイド式のものになる見込み。

独,増加するインターネット動画視聴

ドイツの公共放送ARDとZDFは5月27日,2009年国内インターネット利用動向調査の結果概要を速報版として公表した(3~4月調べ)。調査によると,14歳以上の人口の67.1%にあたる4,350万人がネット接続環境にあり,14歳から29歳の年層に絞ると,96.1%が日常的にネットを利用している。また,ネットで動画を視聴する利用者の割合は,前年の55%から62%に伸びた。

伊,ラツィオ州のデジタル移行で助成制度が不振

6月16日,首都ローマのあるラツィオ州で公共放送Rai Dueと商業放送Rete 4の2チャンネルがアナログ放送を終了した。対象となった住民は約450万人。同州では,65歳以上の高齢者と年間所得が1万ユーロ未満の低所得者向けに,セットトップボックス購入のための50ユーロの助成を行った。しかし,1週間後の6月23日時点で,助成資格をもつ約13万人のうち,実際に申請した人は約7,400人にとどまっている。理由は,助成の対象機種となっている双方向型のMHP モデルを嫌って,約半値で買える非MHP モデルを選んだ人が多く,助成制度を利用できなかったためとみられる。