放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

イラン,BBC支局長に国外退去命令

イランでは大統領選挙の投票結果をめぐり,再選されたとする大統領支持派と選挙に不正があったとする改革派の間で深刻な対立が続いているが,保守派の通信社ファルス通信は6月21日,「でっちあげの中立性を欠いた報道で暴徒を支持しイラン国民の権利を踏みにじった」として,政府がBBCテヘラン支局長に 24時間以内の国外退去を命じたと伝えた。イラン政府は大統領選後,外国人記者の記者証を無効としデモ取材を禁止するなど厳しい報道規制を敷き,デモの生中継を阻止するためBBCペルシャ語衛星テレビの電波を断続的に妨害,アラブ首長国連邦の衛星テレビ局アルアラビアのテヘラン支局閉鎖も命じている。一方,パリに本拠を置く「国境なき記者団」は,6月21日,大統領選後に逮捕されたイラン国内のメディア関係者は確認されただけで33人に上る,と発表している。

北朝鮮に拘束中の米人記者に「労働教化」12年の判決

北朝鮮の朝鮮中央通信(KCNA)は6月8日,北朝鮮の最高裁判所に当たる中央裁判所が,拘束中のアメリカ人記者2人に対して,民族敵対行為と不法入国の罪により12年の「労働教化刑」を言い渡したと報じた。2人の記者はアメリカのケーブルテレビ「カレントTV」所属の韓国系ユナ・リーさんと,中国系のローラ・リンさんで,3月17日に中朝国境の豆満江付近で脱北者の問題を取材中に北朝鮮の軍に拘束されていた。

韓国,メディア委がメディア法の改正について最終報告書を提出

6月25日,韓国国会の文化体育観光放送通信委員会(文放委)の傘下にあるメディア発展国民委員会(メディア委)は,与党ハンナラ党による,2013年から新聞と放送の兼業禁止を解除する案を盛り込んだメディア法改正案の最終結果報告書を文放委に提出した。メディア委は今年2月に与野党の合意により,放送法や新聞法などメディア関連法に関する世論をまとめるために組織され,与野党がそれぞれ推薦した委員の間で論争が行われてきたが,6月17日,世論調査の実施をめぐる対立から事実上暗礁に乗り上げ,与野党がそれぞれ最終報告書をまとめてメディア委に提出していた。

中国,ネット検閲ソフト導入義務化を延期

中国国営の新華社通信は6月30日,中国政府が7月1日から予定していたインターネット検閲ソフトのパソコン搭載義務づけを延期したと伝えた。中国政府は,ポルノサイトの取締りを理由に,「緑餽」(Green Dam)と称する中国メーカー製の検閲ソフトの搭載をすべてのパソコンメーカーに義務づける方針を表明していた。しかしこの方針に対しては,ポルノ以外に中国の民主化に関する情報などもブロックされるおそれについてアメリカやEUが懸念を示したうえ,国内からも情報の自由な流通を制限することへの反対意見が強く,一部

のネットユーザーは7月1日にインターネットを利用しないという形での抗議行動を呼びかけていた。

インド,22の衛星TV新チャンネル認可

インドの情報放送省は,6月26日,衛星テレビの22の新チャンネルを認可した。これでインド国内のケーブルテレビやDTH 衛星放送,IPTVなどを通じ放送することが正式に認可された衛星テレビチャンネルの総数は458チャンネルとなった。今回認可されたチャンネルの中には長期にわたり認可が棚上げされていたFox Channel(India)社のNational Geographic HDやNat Geo Wild, NatGeo Adventureなどが含まれている。

インド,女性だけによる初のCRSに免許

6月24日,インドでは初めて女性だけの手で運営されるCRS(コミュニティー・ラジオ局)に放送免許が与えられたことが分かった。免許を取得したのはグジャラート州の農村地域で女性の啓蒙活動を行っているNGO団体Mahila SEWA(「女性への奉仕」の意)。コミュニティー・ラジオは半径10キロの狭い範囲をカバーする小規模のFM 局で,Mahila SEWAの放送範囲内には約30の村落がある。免許を取得した団体は,3か月以内に開局することが決められている。インドでは2003年,チェンナイで初めてのコミュニティー・ラジオ局が開局しているが,MahilaSEWAは免許を取得した48番目の団体となる。